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活発化するエンタープライズ向けクラウドコンピューティング - (page 2)

文:Dion Hinchcliffe(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子

2008-09-08 08:00

クラウドコンピューティングによってもたらされる変化

 クラウドコンピューティングによって、大企業におけるコンピューティングリソースの確保や運用、管理におけるさまざまな側面は、大きく変化していくことになる(ただし、必ずしも望ましい変化になるとは限らない)。こういった側面には以下のようなものがある。

  • 設備投資費の削減--コンピューティングリソースのインフラに関連して発生する初期コストの多くは、クラウドコンピューティングのプロバイダーによって負担されるため、企業の初期投資は大幅に削減できることになる。また継続的に発生するコストも、規模の経済原理が働くうえに、マルチテナンシーによって低下することになるため、まれにしか実行しないタスクであっても、より低コストでクラウドコンピューティングを利用できるようになるのである。
  • 利用にあたっての敷居が低い--クラウドコンピューティングでは、ハードウェアやソフトウェアの確保やインストールにあたって、すべてのニーズを考慮しておく必要がなく、リソースに対してオンデマンドで、しかもしばしばリアルタイムでアクセスすることが可能となっている。このため、クラウドコンピューティングの利用は、プロバイダーのアーキテクチャモデルに完全に依存するとはいえ、既存のアプリケーションをデータセンターに移管するのと同じぐらいに簡単に行えるのである。
  • マルチテナンシー--クラウドコンピューティングモデルでは、複数の顧客が多くの同一リソースを共同で利用することになる。このようにすることで、コスト負担を分散できるだけではなく、土地建物やネットワーク帯域幅、電力を含むリソースの一極集中化によって規模の経済原理が働くようになる。ただ、マルチテナンシーは効率化を実現するための重要なファクタの1つであるものの、セキュリティにまつわるある種の問題を生み出すことにもなる。
  • セキュリティ--理論的に言えば、クラウドコンピューティングではコスト負担を分散させることでセキュリティ関連の対策やインフラに対して包括的かつより大きな投資を行うことができるようになるため、自社でコンピューティングを行うよりもセキュアなものとなるはずである。とは言うものの、企業の機密データに対するアクセスとその管理については懸念が残っている(ただしこれまでのところ、クラウドコンピューティングにおいて大きなセキュリティ問題が発生したということは報告されていない)。
  • スケーラビリティとパフォーマンス--クラウドコンピューティングでは、従来のインフラのように巨額のコストを負担することなく、高いスケーラビリティを実現することが可能になる。また、ピークタイムを考慮してリソースを用意し、オフピークタイムとなるほとんどの時間にそのリソースを眠らせてしまうという無駄なコスト負担も避けることができるようになるのだ。さらにクラウドコンピューティングでは、プロバイダーの多くが世界中にデータセンターを配置し、ユーザーから見たネットワーク上でのアクセス距離をできる限り短くしようとしているため、パフォーマンスも非常に優れたものとなるはずである。とは言うものの、企業とクラウドコンピューティングのプロバイダー間の距離は、ローカルデータセンターよりも大きくなるのが一般的である。このため、これに伴う遅延は、ローカルリソースを使用する場合よりも大きくなることがしばしばある。とは言うものの、多くのアプリケーションにとっては、十分許容できる範囲に収まることもしばしばあるはずだ。
  • 一極集中化 vs. 連合化--クラウドコンピューティングは、AmazonやSalesforceなどが採用しているような一極集中化でも、BitTorrentやArjunaが採用しているピアツーピアといった技術を用いた高度な分散化でも実現することができる。いずれの手法でも規模の経済原理が働くものの、Tim O’Reilly氏が2008年7月に述べたように(「Open Source and Cloud Computing」)、連合化されたコンピューティングリソース上でのシステム構築は、現時点ではまだ揺籃期にあるとはいえ、一極集中化されたリソース上でのシステム構築よりも適切となる場合が多いのである。
  • サービス指向--クラウドコンピューティングはネットワークを介して提供されるサービスであるものの、真のサービス指向では、そういったサービスはコンポーネント化したり、プラグイン化したり、組み立て可能にしたり、疎結合にしたりすることが可能になる。OpenIDに代表されるこういったサービスのインタフェースはしっかり定義されているため、クラウドコンピューティングにおける数多くのプロバイダーは本質的に可換なものとなるのだ。クラウドコンピューティングはサービス指向色を強めてきており、中でもAmazonはサービスの成熟度と幅広さでトップを走っている。結局のところ、クラウドコンピューティングはウェブを完全にグローバルなサービス指向アプリケーション(SOA)にしつつあるのだ。

 ウェブ自体も現存するものの中では最大のクラウドコンピューティングリソースであるという点に言及しておくべきだろう。高度に分散化されたそのコンピューティングノードの数は何百万にも上っており、第三者に価値を提供するという観点から言えば全体として最も成功したモデルとなっている。これは過去のAOLやProdigy、MSNといった、閉じたネットワークを提供していたプロバイダーとは一線を画している。このことはおそらく、クラウドコンピューティングの最終形を予測するうえでの重要なヒントとなるだろう。それは、プロプライエタリな一極集中化されたサービスではなく、可換な連合化されたサービスが強調されたものとなるはずである。さもなければ、クラウドコンピューティングはオープンソース製品を基盤とし続けたとしても、プラットフォームにユーザーを縛り付けるような、もう一つの収益基盤にしかならないだろう。

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