2007年6月、GoogleやIntel、その他のコンピュータ関連企業が、PCのエネルギー効率の向上を目指す「Climate Savers Computing Initiative」をスタートさせた。彼らの主張の1つが、現在のサーバで使われる電力のおよそ半分は、ACからDCへの変換の過程で無駄になっている、というものだ。
改善策の1つとして、熱的に非効率なAC/DC変換プロセスを個々のサーバから切り離す方法が提案されている。サーバにDC専用電源を搭載するのは難しくない。AC/DC変換をデータセンターの外で処理できれば、熱を発する電源がデータセンターからなくなるとともに、機器を冷やす空調システムの必要性が少なくなる。
また、HPのPerkinson氏によれば、各種データセンターは室温18℃〜22℃前後の設定で運用可能だという。電力料金を大きく節減できるほか、空調装置に伴う二酸化炭素排出量を抑えられる。
環境に配慮することがデータセンターの設計において基本的な要件になるのに伴い、長期的にはそのような対策も広まっていくだろう。このような動きは、非効率なファンをより効率の高い熱交換システムへと置き換えた水冷サーバのような革新的技術への道筋を開くかもしれない。かつて一般的だった水冷方式は、見た目に簡単な空冷方式に取って代わられたが、最近、IBMが開発しライセンス供与を始めた、従来の空冷システムに比べ発熱を55%も低減する水冷技術が復活しようとしている。
現在の電力供給の構造はとても持続可能とはいえない、という認識が広がり、そこから生まれたアイデアをもとに、20年後の公共の電力網や環境システムは、おそらく大きな変化を遂げているはずだ。あらゆるマクロトレンドは将来の電力需給が行き詰まることを示唆していて、企業はデータセンターの継続的かつ安定的な拡大を図るために、でき得る限りの消費電力の削減を強いられることになるだろう。そして電力消費を抑えることができた企業には米国式の奨励金が給付される可能性もある。
こうしたことは、次世代のデータセンターでは屋上に風力発電や太陽電池を設置しなければならないということを意味するのだろうか。おそらくそうなのだ。たとえば、南オーストラリア州にある、BHPの銅とウランの鉱山「オリンピックダム」での採掘事業に関連して、2010年までに同州の電力量のほぼ半分を消費するだろうといわれていることからも分かるように、電力の問題は企業の事業戦略と密接にかかわる問題になっているのである。