已むに已まれない事情
すでに書いたとおり電話を中心とした通信の市場が崩壊してしまった今、問題になるのが過去の遺産である古い音声用(電話専用)の通信設備です。季節ごとに新しく携帯電話が発表されるこのご時世に信じられない話かもしれませんが、NTTでは、固定音声通信を支える通信設備を1982年からつぎはぎをして使い続けています。
それも機器は複数メーカーの共同開発で、超カスタマイズ品。もちろん、データ通信の世界は標準化された外国製で安価です。国産のカスタマイズ品は保守・運用費用が高価になってしまうのは容易に想像できますね。
しかも、技術者の高齢化で確保できないという問題にもぶちあたっています。たとえば、電話交換機の代表であるD70という機器は、2015年には運用の限界になるといわれるほど深刻な状況なのです。
通信キャリア全てがこの問題に直面している訳ではありません。この問題にシビアに直面しているのは、電話開設時から事業を牽引してきたフラグシップキャリアと呼ばれる旧国営の電話会社が中心になります。歴史と伝統が、今になって大きな足かせになってしまったのです。例えば、国内でKDDIやソフトバンクが”NGN”で騒いでいないのは、音声用の古い通信設備を大量に持っていないからなのです。コストの参考として、英国のフラグシップキャリアであるBTが出した試算では、NGNに伴うコスト削減は2000億円にも及ぶとのこと。その額が馬鹿にならないことがお分かりになるでしょう。
つまり、
NGNとは、過去の遺産であり高価な電話専用の通信機器を安価で信頼性の高いデータ通信の機器にのせかえたもの 要約すれば、これが通信キャリアにとってのNGNの実体です。彼らにとっては全ての通信を支える基幹の通信設備を統一してコスト削減しましょうというものなのです。
NGNであなたのビジネスになにがおこるの?
では、この連載の趣旨に則ってNGNがビジネスに与えるインパクトを考えてみましょう。