3Dストアは「Photosynth」テクノロジとインタラクティブな操作を合わせた環境だった。Mundie氏は店内を「歩き」回ることができ、また、店員や妻など、いろいろな人たちと友達リストを使ってテキストまたは音声で会話することもできた。さらに、その美術品の動画を見たり、3Dモデルを回転させて、彫刻のさまざまな部分を鑑賞したりすることもできた。
次に、Mundie氏はスマートフォンを使った物理的な空間のナビゲーション方法を披露した。特定の空間にスマートフォンを向けると、バスの到着予定時刻や、ユーザーのプロフィールをベースに関心のある商品を置いている店舗など、地元の情報が表示された。
Mundie氏はこのデモをspatial computingにおけるクライアントとクラウドの能力を証明するものと位置づけた。「ローカルなデータサービスと一元化されたデータサービスを交互に行き来するものが必要だ」
spatial computingの登場で重要な役割を果たすのは、Microsoftの強みであるプログラミングツールだ。Mundie氏によれば、物理世界のサイバースペース版ともいうべき一種のパラレルワールドを作り出すには、誰もが継続的に貢献する必要があるという。センサとユーザーは無数のデータを生成するが、それには、より緩やかに結合された、分散した非同期の環境での同時性と複雑さに対処する必要がある。
「わたしたちのツールはこのレベルのシステム設計に対応するようにできていない。アプリケーションの作成方法におけるパラダイム変化が必要だ」(Mundie氏)
また、Mundie氏は、ソフトウェア開発は正式な工学の一専門分野になるほど成熟していないとも述べた。「システムの回復力はタスク次第ではない。高度に分散された同時システムによる並行プログラミング環境への移行を習得する必要がある。現時点では初期段階だが、これらの機能を実現するためには必要だ」
さらに、実世界を反映し、何十億人もの人たちが利用できるリッチな仮想環境を作るには、多くのプログラマーが必要になる。Mundie氏は、「100万人にこの方法を知ってもらうには、複雑さを覆い隠さなければならない」と述べた。同氏の目標は、人間と一緒に動作可能な、人間と同等の感覚を持つコンピュータをプログラムすることだ。「そうなれば、ナチュラルインターフェースを手に入れられる」と同氏は語った。
Mundie氏のデモは、ナチュラルインターフェース、シームレスなコンピューティングというBill Gates氏の夢の実現に少し近づいたことを示した。Microsoftにとっての課題は、研究室でのデモを拡張可能な実際の製品、サービスへと変えることだ。Windowsではなく、インターネットをプラットフォームとすることで、Microsoftは、spatial computingの構想を実現するための冒険の旅で、より多くのライバルとパートナーに出会うことになるだろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ