Notesは本当に「古くて高くて難しい」のか--企業のコラボレーション基盤を考える(9) - (page 3)

富永康信(ロビンソン)

2008-10-27 09:00

Notes技術者の高齢化と空洞化

 また、ユーザー側の課題もある。「失敗したのでNotesをやめる」ことを決断するのであれば、Notesで構築したシステムの何がダメだったのか、何が原因で失敗したのかを分析することが必須だ。その分析を十分に行わないまま、「問題が解決しそうなソリューション」に飛びつくのは、最も危険である。実際に他社製品への移行後に失敗に気づき「Notesに戻った」事例も少なからずあるという。

「本来ならNotesを含む失敗事例がもっと世の中に露出して、そのケースに自社が陥っているかどうかを見極めた上で移行を進めた方が有効だと思う。製品機能の単純なマルバツによる比較は、全く意味がない」(丸山氏)

 さらにNotes技術者の高齢化、技術知識の空洞化も問題になっている。Notesを全盛期に現場で使い込んで理解した人物が管理職になり、次の世代にそのノウハウを引き継げなかったケースでは、社内でNotesがブラックボックス化してしまう。それがそのまま運用され続けることでトラブルに発展することが多いのだ。Notes全盛の時代にSEをしていた人々は皆マネジャーになってしまい、部下がNotesを知らないため、慌てて教育を始めた企業もあるという。

 今後はNotes技術者の世代交代とともに技術の継承が行われていくように、現在の状況をしっかりと把握して、新しいバージョンの機能を深く使い込んでほしいと丸山氏は言う。

 もっともこの問題には、Notes自体に「古くて高くて難しい」というイメージがついてしまっていることによる影響も少なからずある。技術者にとって、最新かつデファクトスタンダードとなっている技術を扱いたいと思う欲求は自然なものであり、キャリア面を考えた場合でも、プロプライエタリなイメージがある技術は敬遠されてしまう。また、実際にNotes技術者を育てる土壌も以前に比べて減っている。

 Notes/Dominoの最新版における技術的な先進性をアピールするだけでなく、開発者向けの使いやすいライセンス体系の整備、メーカー主導による講習会や資格認定制度などの拡充、世界に数多く存在するNotes/Domino技術文書のタイムリーな日本語での提供といった施策を進めてほしいと丸山氏は訴える。

情報の可視化と分析がコラボレーション基盤の条件

 今後の企業コラボレーション基盤のあり方について、丸山氏は「企業内で生み出される情報には、その内容に特徴がいくつかある。発信者の意図もあるし、情報を利用する側の価値観も異なる。これからのコラボレーション基盤には、それらを踏まえてスムーズに情報を流通させる機能を持たせることが大きなポイントになるだろう」と語る。

 現在はインターネットメール、ウェブサイト、ブログ、SNS、サーチエンジン、IM(チャット)など、さまざまな情報流通のためのツールが混在している。これらの道具の中から必要なものを見極めて整理することで情報は効率的に流れるようになり、さらにそこに流れる情報を可視化、分析することができて初めて、企業のコラボレーションは次の段階に進化できるというわけだ。

「Notes/Dominoは、メールや業務、ワークフローも管理運用できるオールインワンなプラットフォーム。オールインワンだからこそ、そこに流れる情報を集約し、分析することも容易になるはず。次世代のコラボレーション基盤の構築にふさわしい製品になれると期待している」と丸山氏は言う。

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