移行コストを大幅削減、運用コストも
対象となるサーバは13台。まずは1台を移行し、そこで動かし検証する。それがうまくいくと、後は同じ構成なので同じ手順を踏めば移行できるというシナリオを描いた。
移行するといっても、現在稼働中の基幹システムである。移行のタイミングは月1回のメンテナンス、つまり第3日曜日しかなかった。それに合わせてスケジュールを調整した。移行するサーバは13台だが、基幹システムに使っているのはそのうちの6台。
「6台の基幹システムのサーバは冗長化構成を取っていますので、ある1台を平日切り離して、毎週1台ずつという感じで移行作業を行っていきました。そして残りの7台がActive Directoryのサーバなどですが、その移行はメンテナンスの1日でやろうということになり、移行期間の10月に2台、11月に2台、12月に3台という感じでスケジュールを組みました。たとえば、“この時間までにP2Vのコピーが終わらなければ切り戻して止めよう”とか、細かいタイムスケジュールまで決めてやっていったのです」(池田氏)
結局、基幹システムの移行はP2Vで成功。一方、Active Directoryのサーバ移行はP2Vではつまずいたものの、Windowsを立ち上げて完了。業務が止まったということはなかった。つまり、移行はきわめてスムーズに進んだ。しかも13台の1Uサーバは4台のブレードサーバに集約された。
「13台が結果として4台に集約されましたので、統合せずに13台をそのまま移行することに比べると、コストは4割程度安くなったと思います。4台に集約されていますので、運用コストも下がりました」(森氏)
その間、エンドユーザーはシステムの刷新にはまったく気づかなかった。今回のシステム移行が新聞に出て「何をやったんだ」と反対に聞かれる始末だったという。さらに、新たなメリットもいくつか確認されている。
そのひとつは、新規プロジェクトへの対応だ。池田氏は経験談として「新しいウェブサーバが欲しいというような要求が出てきたとき、また新たなプロジェクトが立ち上がったときにも、仮想マシンを立ち上げれば新規の立ち上げが非常に早いのです。これはすでに経験済みのことですが、われわれシステム部門がネックにならず、新しいプロジェクトを立ち上げることができるようになりました」という話を明かしてくれた。
森氏は将来についても明るい展望を持っている。
「構成は同じままですので、5年前のサーバを切り替えただけでもオーバースペックになっていると思っています。ですから、新しいプロジェクトにも対応できるように余力はあります。さらに、TISさんのデータセンターのラックも集約できるのではないかと思っています。それによって、運用費が下げることができれば、メリットはさらに拡大しますね」
運用費を下げ、その分のコストを新たな開発に回す。仮想化によって、移行コストや移行期間に頭を悩ませていた1年前には想像もできなかった世界が広がろうとしている。