ライターのモチベーションをうまく引き出す
相鉄Styleでは住民がライターとなって記事を執筆しているが、誰でも自由に書き込めるわけではない。ライターとして相鉄Styleデビューする前に審査が行われているだけでなく、すべてのライターが顔出しで登場しているのも特徴だ。顔を出すことで、生活との関わりの深さと安心感が演出できる。また、サイトには最初から多機能のCMSを導入せずに、ライターからのフィードバックを基に機能を徐々に追加している。
シンプルなCMSで始めるメリットについて甲斐氏は、「最初からたくさんの機能を盛り込んでも、ライターも読者も利用しない可能性がある。ライターのフィードバックを大事にすることで書いてもらうモチベーションが上がるきっかけになるだけでなく、最初から大規模のシステムを必要としないので予算にもやさしい」と説明する。次々にアトラクションが生まれるテーマパークのような展開が、長くコミュニティサイトを運営していく上で重要な視点だと甲斐氏は語る。
ウェブはプロモーションよりPRに向いている
企業がコミュニティサイトを立ち上げるのはプロモーションが目的という場合があるが、「ウェブはプロモーションよりパブリックリレーションズ(PR)に向いた媒体だ」と甲斐氏。マスに向けて少しでも多くの人に露出したい場合は、今もテレビや雑誌のような別媒体のほうが向いているが、持続的または長期的に利用者とコミュニケーションをとるのであればウェブが適した媒体といえるだろう。サイト制作前に調査した競合サイトは、いずれもブランドイメージを生かして情報発信をしてはいたが、ウェブにおいて従来のブランドイメージや知名度だけではうまくいかない場合が多く、プロモーションのように短期的ににぎわそうとしても期待とは逆の結果になることすらある。
ウェブだからこそできることは何かを理解し、企業側の視点だけでなく利用者の視点も考慮したコンセプトワークは、企業がソーシャルメディアを利用する際の前提としておきたい姿勢で、4年前に相鉄Styleが立ち上がった当時から変わらないことだ。当時は今ほどメジャーではなかったブログでのサイト作りにあえて挑戦したからこそ成功例として語れる部分もあるだろう。
ソーシャルメデァイアだけではないが、常に新しいものが出てくるウェブにおいて、完全に広まってしまうのを待つのでは遅い場合もある。新しいものを導入するリスクは常にあるが、リスクを成功に転換できる可能性も高い。今ではブログも浸透したが、それを利用したPR戦略はまだ始まったばかりで、模索されきれていないアプローチもある。技術を単に利用するのではなく、今後は利用者との関係作りにどのような組み合わせがマッチしているかが考慮されたPRが出てくるのか期待される。