Appsで「パワーコラボレーター」が生まれる
引き続き、Gmail、ガジェット、カレンダーなどの機能を統合した「Google Apps」に関するデモが行われた。
Glotzbach氏は、まずGmailで自分あてに送られてきたという今回のカンファレンススケジュールに関する日本語のメールをオープン。「日本語が分からないので……」と言いつつ、翻訳機能を利用して、メールを瞬時に英語へ翻訳。その後、Gmailの画面内でGoogle Talkのリアルタイム翻訳機能を介したチャットへ移行し、リリースされたばかりのビデオチャット機能を披露した。
「これだけの作業を行うにあたって、ユーザーは追加作業どころか、別アプリケーションの立ち上げさえも必要ない。これは、コンシューマーだけでなく、ビジネスユーザーにとっても大きなインパクトがある。企業が普通のやり方でこうしたことをやろうとすれば大きな投資が必要になる」(Glotzbach氏)
続いて「クラウドの情報を自在に引き出すことによるポテンシャル向上」の一例として、Google Spreadsheetsを使ったデモを実施した。Spreadsheet上のセルにGoogle関数を利用してアジア太平洋地域の国々と各国の首都名をオートフィル。さらに最新の人口情報をネットから取得し、Google Mapsの地図情報とともにシート上に表示させた。こうして作成したドキュメントは、ガジェット化してポータル上にマッシュアップすることもできる。もちろん、そこで表示される情報は常に最新の状態に保たれる。
Glotzbach氏はGoogle Docsについて、オフィスアプリケーションの「軽量版」というよりも、ドキュメントを通じた「コラボレーション」に主眼を置いている点を強調。こうしたアプリケーションをクラウドで展開することで、これまでになかったさまざまなコラボレーションが実現できるという。また、企業内でITを駆使して仕事を遂行する人としての「パワーユーザー」の概念は変化し、企業内外の情報を価値のある形でマッシュアップできる人材としての「パワーコラボレーター」が現れるだろうとした。

最後に同氏はメッセージとして「UIがシンプルだからといって、その機能までが単純だと考えてはいけない。今後、テクノロジーのイノベーションはクラウド上で実現されていく。旧来のソフトウェアが抱えていた長期のバージョンアップサイクルや高額なライセンス料金は見直しを迫られることになる」と述べ、ITコンシュマライゼーション、そしてクラウドコンピューティングの先駆者としてのグーグルが企業に与えるメリットを訴えた。
基調講演後、Google Moderatorを利用しておこなわれたQ&Aセッションでは、「Google Appsを採用した場合、利用企業側が継続的に統制を維持していることをどのようにして示せるか」という質問が出された。グーグルでは、同社の企業向けサービスが米国公認会計士協会が策定した監査基準書「SAS70」に対応可能であるとし、特に企業間でのコラボレーションを行っている場合などに、監査基準書作成の手間を低減できることが示された。