ニセブログで信頼を失ったWal-Mart
ソーシャルテクノロジを取り入れる企業は増加傾向にあるが、単にこうした技術を利用したからといってユーザーに支持されるとは限らない。Owyang氏はソーシャルマーケティングの失敗例として、大手ディスカウントチェーンのWal-Martを挙げた。
まず一番大きな失敗は、Wal-Martを担当するPR会社が、一般消費者を装ってWal-Martに関するブログを執筆していたことだ。「PR会社の書く表現は一般消費者のものとは違う。偽物はすぐにばれてしまうものだ」とOwyang氏は述べ、企業における透明度の重要性を訴えた。
またWal-Martは、「POST」の「P」であるユーザーの特性をつかまないままSNSを立ち上げた。これは「魚のいないところで魚釣りをしているようなものだ」とOwyang氏。案の定、このSNSには全く人が集まらず、わずか10週間で閉鎖した。
その後、自らSNSを運営することをあきらめたWal-Martは、既存のSNS「Facebook」内にコミュニティを立ち上げた。しかしそこでもWal-Martは失敗をおかす。Owyang氏によると、Wal-Martのコミュニティサイトではディスカッション機能をオフにしていたため、対話が生まれなかったというのだ。その結果、「Wal-Martのコミュニティは119人しかユーザーがつかなかった。競合のTargetも同時期にコミュニティを立ち上げたが、Targetのユーザーは7000人を超えた」(Owyang氏)という。
Owyang氏は、「リアルな対話があるコミュニティの方が信頼されるもの。これは、信頼度に関する調査でも証明されている。批判的な意見が述べられていたとしても、偏りのない意見があるからこそユーザーの信頼感も得られるのだ」と指摘する。
成功と失敗の基準となるのは?
ソーシャルマーケティングを実施するにあたって課題となるのは、それが成功したかどうかがわかりにくい点だ。Owyang氏は、ソーシャルマーケティングの成功と失敗を見極めるにあたって「ページビューといった指標は全く意味をなさない」と話す。
Owyang氏によると、ソーシャルマーケティングが成功したかどうかは、POSTの「O」、つまり目的に基づいて計るべきだと言う。例えば、口コミマーケティングが目的だとすると、「口コミ情報が広まった早さと範囲などを見るべきだ」とOwyang氏。同氏は、口コミ情報の広まる速度がトラックできるツールを導入するなどして、目的に合った成功の指標を定めるべきだとしている。