クアルコム幹部、Netbook向けチップ開発に向けた取り組みを語る

文:Brooke Crothers(CNET News.com) 翻訳校正:編集部

2008-12-16 15:29

 QUALCOMMは、4年の歳月と総額3億5000万ドルを費やし、小型のノートPCおよびハンドヘルド向けチップの設計に取り組んできた。そして、その取り組みが2009年についに実を結び、複数のデバイスメーカーが「Snapdragon」プロセッサを搭載した製品の発売を計画している。

 筆者は米国時間12月12日朝、サンディエゴのQUALCOMM本社にて、大変小さく軽量なノートPC(Intel陣営はNetbookと呼んでいる)向けプロセッサの開発に向けたQUALCOMMの取り組みについて、同社幹部と話し合った。

 QUALCOMMが用意した試作機は外見上はNetbookのように見えるが、内部で使用されているSnapdragon技術は、Intelの「Atom」プロセッサとは全く異なる。Atomプロセッサは、現在市場に出回っている多くのNetbookに使用されている。

 この内部に組み込まれているプロセッサこそ、QUALCOMMが進めるIntelとの差別化戦略の核心部分だ。

 QUALCOMMのConnected and Consumer Products Groupの製品管理担当ディレクターであるManjit Gill氏は、「Intelは偉大な企業だ。社員も大変優秀だと思う。しかし、(Intelの)アーキテクチャには多くの制限があるとわれわれは考えている」と語る。つまりGill氏は、Intelの技術は情報処理能力よりも接続性が重視されるこの市場にはふさわしくないと考えているのだ。

 「われわれは、(端末が)ネットに常時接続されている状況を想定している。端末の電源を切っても、ネットへの接続状態は維持される。(ノートPCが)Exchangeサーバにメールを取りに行き、そのメールをドライブ(ソリッドステートドライブまたはハードドライブ)に置いておく。そしてユーザーがメーラーを開くと、メールがそこにある。瞬時に起動し、常にネットに接続されている」(Gill氏)

 Gill氏は、「では、果たしてIntelのプラットフォームで、同様の価値ある提案が可能だろうか」と問い掛けた上で、予想通り否定した。「(Intelのプラットフォームでは)2、3時間後にバッテリが完全に切れてしまう。これでは、1日中バッグに入れたままの状態で、すべてのメールを受信するのは不可能だ」

 Snapdragonに含まれる技術により、QUALCOMMは、Intelの技術を使わない、Netbookとは異なる種類の端末の開発が可能になる、とGill氏は主張する。

 しかし、Intel技術を排除しすぎるのは決して得策ではない。Intelは、QUALCOMMが行ったような主張に対しては、一貫して、消費者はWindowsやWindows対応のソフトウェアやアプリケーションが使用可能なIntelのx86アーキテクチャベースの製品を使い続けたいと考えている、と反論してきた。たしかに、これはAtomベースのNetbookの人気が急速に広がった1つの要因だ。

 しかし、QUALCOMMの目標は、Intelを凌ぐことだけではない。現在、多くの一般消費者向け端末に搭載されているARM製プロセッサを凌ぐ製品の開発も同社の大きな目標の1つだ、とGill氏は語る(ARMは、英国の半導体設計会社で、サムスン電子やNVIDIA、QUALCOMMなどにチップの設計をライセンス供与している)。

 「約4年前、(QUALCOMMは)IBMのPowerPCグループで働いていた技術者を大勢採用した」とGill氏は語る。同氏によると、その技術者らが所属していたIBMのチップグループは、省電力の「組み込み型」端末向けのチップを設計しているという。

 ARMが設計する一般的なチップの最大動作周波数はおよそ500MHzだが、この周波数ではQUALCOMMが目指すユーザーエクスペリエンスを実現するには不十分だ。そこで、QUALCOMMの新チームには、この周波数を大幅に向上させる任務が課された(ちなみに、IntelのNetbook向けAtomプロセッサの現在の最大動作周波数は1.6GHz)。

 「これを超える何かを実現するために前進する必要があった。そのため、われわれは(ARMから)アーキテクチャライセンスを得て、約50人からなるCPU設計者のチームを編成し、任務を課した。そして、4年の歳月と3億5000万〜4億ドルを費やした後、われわれは(一般的な)ARM CPUよりも実際に高性能なCPUを手に入れた」(Gill氏)

 この取り組みの成果は、デュアルコアのSnapdragonであるQUALCOMMの「QSD8672」チップで、1.5GHzの処理能力をもつ2つのコンピューティングコアを搭載している。また、下り最大28MbpsのHSPA+方式や1080pの高画質(HD)ビデオ、Wi-Fi、モバイルテレビ、GPSに対応している。グラフィックスコアは、Advanced Micro Devices(AMD)のATI部門の技術をベースにしている。

 QUALCOMMによると、Acer、ASUSTeK Computer、東芝などの企業がSnapdragonベースのデバイスを計画しているという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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