「ERPや財務会計などの基幹系システムは明確な目的がある。対するBIは目的がわかりにくい。現在のBIの目的としては、法対応、つまり内部統制の確立と、成長戦略をもたらすものという2つになるだろう。ジールでは、成長戦略をもたらすという目的としてBIの構築を支援している」
データの品質をどう維持するか
青柳氏は、データ管理という側面からユーザー企業の課題は3つあると整理する。
「一つは、経営戦略をサポートするための情報系システムが必要とされていることだ。最近では、企業の合併・買収(M&A)が増えてきている。基幹系システムの統合には時間がかかるが、対する情報系はより迅速に統合する必要がある。これが二つ目だ。そして三つ目がマスタデータ統合だ。これは永遠の課題と言っていいだろう」
経営戦略をサポートするための情報系システムは、競合との差別化を図るためにデータを可視化することが重要になってくる。そうした情報系システムは戦略的な投資となるが、ここでDWH/BIの導入が注目されてくる。そこでデータ品質をどう維持するかが具体的な課題となっているのである。
“永遠の課題”であるマスタデータ統合には、たとえば顧客という“ヨコ串”でシステムを見ることができないという古くて新しい問題が存在していると青柳氏は説明する。
白石氏は、ユーザー企業の現状について「情報をどう活用していくかが問われている。また最近では、個別の企業としてではなく、グループ企業としてどういう戦略を取るべきかという課題がこれに加わっている」と語っている。
情報をいかに活用していくかという点に関連して「ユーザー部門はより鮮度のあるデータ、つまりデータのリアルタイム性が求められるようになってきている」と白石氏は説明する。データのリアルタイム性が求められるようになってきているのは、データは「試行錯誤で分析せざるを得ない。そうしたことを考えると、あまり時間をかけていられない」(白石氏)という意識があるという。
マスタデータ統合という課題について白石氏は、「どう統合させていけばいいのか、(統合に関する)ルール化をどうすればいいのか、ということが問われるようになっている」と説明する。
エンドユーザーは“精度”の高いデータを要求
マスタデータ統合に関連してMDITの草場信夫氏(データセントリックソリューション第一部部長)は、「アプリケーション横断的にDWHを作ったが、データの“品質”が悪くて使えない」という現状を説明。草場氏はその原因がDWHの「“Gabage In Gabage Out”(GIGO)」にあると指摘する。
つまり、基幹系システムからのデータをDWHにただ単に集積しているにすぎず、「同意語や同音異義語の問題、複数のマスタの問題を解決していない」(草場氏)ために、DWHにあるデータに対する信頼は低下していると説明する。DWHにあるデータを信頼していないために、「ユーザー部門は、“DWHを見ても仕方ないから、基幹系システムのデータを見よう”という事態を招いている」(草場氏)。
また、データの品質が悪いという状況は、それぞれユーザー部門ごとの「目的別のDWHができてしまう」(草場氏)ことを招き、「エンタープライズDWHではなく、“サイロDWH”が乱立する」という事態に陥っているという。
データの品質が悪いというのは、一方でDWHにあるデータが“クリーン”であるかどうか疑問視されているからでもあると草場氏は説明する。「データの“精度”がエンドユーザーの欲しがっているものではない」(草場氏)からである。