DWHに関するこれらの問題を解決するためにMDITでは、基幹系システムからのデータを一元化する層を構築するというシステムを提案している。「オペレーショナルデータストア(ODS)とMDM、さらにメタデータという組み合わせでデータを一元化する」(草場氏)というものだ。
具体的には、基幹系のさまざまなアプリケーションにあるデータを加工・編集後にODS/MDMに流して、その後でまた加工・編集してからDWHに送るという仕組みだ。ODSは、基幹業務処理系システムのデータを検索など別の目的で利用するために抽出して、一時的にデータを保持するデータベースだ。異なる業務アプリケーションの異質なデータを目的に応じて抽出・変換・統合して単一のデータベースを設置することで、たとえば「現在の出荷状況」「顧客のリアルタイム分析」が可能になるとされている。
MDITのこの仕組みでは、メタデータを活用する。メタデータは「データの地図であり、データのためのデータを管理する」(草場氏)もの。「データがどこで生まれてどこでどうやって育ってきたかを明らかにする」(草場氏)というメタデータ管理を、MDITはDWHの問題を解決するために用いている。
リアルタイムにいかに情報を活用するか
NECの白石氏は、ユーザー企業の「基幹系システムは個別最適になってしまっている」という過去からの経緯を踏まえた上で、「個別最適をつなぐとスパゲティ状態に陥ってしまう。そうした状況ではデータをリアルタイムに活用するのは難しい」と説明。そうした課題を解決するものとしてNECでは、情報管理ソフトウェア群「InfoFrame」シリーズを提供していると白石氏は主張する。
ジールの山本氏は、「日本でもCRMや営業支援システム(SFA)が導入されるようになってきているが、実際のところうまくいっていないのではないか」と見ている。「ほかのシステムとの連携を考えていなかった」(山本氏)ために、CRM/SFAから出てくるデータを経営層が望んだ形で活用できていないと山本氏は分析する。
ここまで見てきたように、さまざまな視点からデータ統合の基盤を構築する必要があることを認識されていることが分かるだろう。富士通SSLの青柳氏は、ユーザー企業がSOAに取り組む過程において「マスタデータ統合の必要性に気付いている」という現状があることを説明。また、NECの白石氏も「リアルタイムに情報をいかに活用するか、という点でデータ統合の必要性が高まっている」との認識を示している。
ジールの山本氏は「BIのシステムがカットオーバーしても、実際には50%しかできていない」と説明。これは「カットオーバー後にユーザー企業が自らルールを作っていくから」(山本氏)だ。「データがどんな意味を持っているかは、そのままビジネスの意味を決めることになる。そうした点から考えても、データ統合は必要になっている」(山本氏)。
顧客を“360度の全方位的な視点”で管理する
ユーザーセッションでは、米通信業界第2位のVerizonの事例が発表されている。同社は、レガシーシステムの請求書データを抽出して、印刷用フォーマットからリレーショナルデータ形式に変換して、オンラインシステムに配信することで、顧客へのリアルタイム請求書の開示を可能にしている。このシステムにはInformatica 8.6が活用されている。