Verizonでデータウェアハウジング&ビジネスインテリジェンス担当ディレクターを務めるWes Flores氏は、同社が構築したシステムについて「顧客データ統合」(Customer Data Integration:CDI)という言葉を掲げる。個々のデータが対象とする領域で、適時性、意味、企業の参照データの質を確保するための一連のプロセスと手法がMDMだが、CDIは、顧客データに関するMDMの自動化を意味していると、Flores氏は説明する。
VerizonがCDIシステムを導入するに至った経緯は、顧客IDの混乱があったからだ。同社の各現業部門がそれぞれのビジネスニーズに基づいたアカウント定義を個々に定義していることで、社内に複数の顧客IDが存在。当然、全システムを通じて単一の顧客IDは存在しない。加えて、顧客IDはビジネスプロセスや実際の顧客にリンクされることがない。
これらの状況から、「顧客について、サービスや分析に利用できる統一の視点、“360度の全方位的な視点”は存在しないことになる」(Flores氏)。つまり、同じ顧客が複数の製品やサービスを購入する場合に分からない、顧客へ製品を推奨する仕組みが存在しない、同じ顧客IDやアカウントIDを持つ顧客が存在する、限られた視点だけから顧客を評価していることが、顧客からの評判や売り上げの低下につながっている、などの事態が発生することになる。
CDIの可能性
CDIシステムを導入すれば、具体的にはどういったことが可能になるのだろうか。たとえば通信企業であれば、ある顧客の顧客IDを見ることで、現在使っているサービスの種類、その顧客から受けた申し込みが保留となっていること、使っている製品や設備がどんなものであるのか、これまでにどんな請求の問い合わせをしてきたのか、あるいはサービスに関連してどんなトラブルを経験しているのかなどの履歴、毎月の平均支払額、などさまざまな情報を単一の顧客IDで知ることができるようになる。通信企業にとっては、顧客が解約する可能性を知っておく必要があることから、解約可能性をレイティングで示して、顧客ごとにあったキャンペーンなどを展開する、といったこともできるようになるのである。
このほかにも、サービスAを使用しているがサービスBを使用していない顧客に対して、サービスBを使用するように奨めるクロスセルの効果を向上させることができる。また、見込み客の段階から実際の顧客となる段階への追跡管理能力を向上させることもできるだろう。単一の顧客IDで管理することで、顧客と過去のコミュニケーションを把握して顧客満足度を向上させることもできる。同時に、サービス解約の危険性を把握することで、顧客にあわせた販促活動、関係維持のための提案を実行するといったこともできるようになる。
VerizonのCDIシステムでは、5段階で単一の顧客IDを作り上げていく。第1段階として名前の標準化、第2段階で住所のクレンジングと標準化、第3段階でマッチング、第4段階として関連付け、第5段階で統合という5段階だ。このシステムには、Informaticaに含まれる、データ統合基盤である「Informatica PowerCenter 8.6」とデータ品質を管理する「Informatica Data Quality 8.6」、データのプロファイリングとマッピング機能を持った「Informatica Data Explorer 8.6」(日本でのリリースは未定)が活用されている。