ただ、そのまま「Fortune comes in by a merry gate」と言っても彼の心には届かないでしょう。これは「楽しそうにしていれば幸せがやってくる」というニュアンスで、単に刺激のない毎日を過ごしていて暗い表情の人にはちょうどいい言葉ですが、今の彼にはあまり慰めにならないですからね。同じような表現に、「Fortune comes to a merry home」もありますが、笑顔のこぼれる楽しい家のイメージは、失恋した彼に恋敵と彼女の楽しそうなホームパーティーを想像させてしまう可能性があり、傷口を広げかねません。また、「Laughter is the best medicine」(笑うことが一番のクスリだよ)という表現も、失恋したての彼が本当に笑って少しでも楽になるのか疑問です。
その時、私が言った言葉は
John, laugh, and the world laughs with you. It's just like you, isn't it?
でした。これは詩人Ella Wheeler Wilcoxの「Solitude」という詩の引用で、よく使われる表現です。最初の「Laugh, and the world laughs with you」というフレーズはこの詩の最初の一文で、「Weep, and you weep alone」と続きます。つまり、「笑顔で周りを明るくし、悲しい時には1人で泣く。それがお前らしいじゃないか」というニュアンスが含まれているのです。
私がこのフレーズを聞いて思い出すのは「男はつらいよ」の寅さんです。寅さんは、この言葉のニュアンスにピッタリだと思いませんか? やさしいJohnは彼女の幸せを笑顔で祝福できるやつだという私の思いが込められています。そして、私はもう一言付け加えました。
But Weep, and you weep with me! (でも、今回は一緒に泣いてやるからさ!)
言葉は単なる翻訳ではなく、あなたの言いたいことを表現する1つの方法です。文学や映画に触れてそのニュアンスをあなたの表現に生かすことができれば、もっともっとコミュニケーションが楽しくなるはず。解釈の仕方であなたの個性も出てきます。2009年もこうして楽しみながら英語に触れていこうと思うので、よろしくお願いいたします。
Peace out,
Eric
筆者紹介
エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。