すべてが見えるとムダまで見える
このプロジェクトで、みずほ情報総研は新たにSAP ERP 6.0用に資産管理および予算管理の仕組みを構築した。さらに、それまで使用していたSAP R/3用の固定資産管理テンプレートの機能モジュールも移植し、アドオン部分を活かしたうえで、SAP ERP 6.0用にチューニングを行って仕上げた。
みずほ情報総研のシステムエンジニアである木村元一郎氏は「従来使っていたSAP R/3の仕組みをSAP ERP 6.0に乗せ換えたのではなく、SAP ERP 6.0で新しい仕組みをつくり上げ、その上にSAP R/3のデータを移行したというイメージだ」と説明する。
新しいシステムのメリットは何だろうか。北村氏は「毎月何万件とあがってくる伝票を1件1件見ることができるようになったことだ」と話す。例えば、従来はNTTからの電話回線の納付書に対して、1件ずつ支払うのは面倒なため、まとめて処理していた。そのため、個々の回線にいくらのコストが掛かっているのかは見えなくなっていた。
「新システムはすべてが見える。すべて見えるとムダも見えるようになる」と北村氏。例えば、みずほ銀行は約4万回線を使用しているが、回線コストを月額で約600万円も削減できたという。個々のコストが「見える」ようになったことで、いろいろな施策が打てるようになったのだ。
決算のスピードアップもメリットだ。いくつかのシステムをまたいでいると、システムごとの計数を突き合わせて、検証したうえで決算報告をしなければならない。計数にズレがあった場合は、時間をかけて伝票の中身を拾っていくことになる。今回、ERPで1つにつながったことにより、そうした検証もスピードアップした。
北村氏は、今後この資産・予算管理の仕組みをグループ内に展開していく考えだ。すでに、グループ内の他エンティティにおいて検討が始まっているという。
「同じプロセスの業務をグループ各社が個々にやる必要はない」と北村氏。グループ間でシステムの共有化を進め、数年かけて、グループ内の業務受託会社に業務を集約し、合理化を進めていくことも視野に入れる。北村氏は「次のシステム更改時期にはSOAに取り組みたい」と話す。
みずほ情報総研では、今回のケースで開発した資産・予算管理の仕組みをSAP ERPモジュールとして商品化した。既にグループ外からもいくつか引き合いがあるという。このモジュールには、パッケージ化されたファシリティマネジメントシステムとの連携機能が付属する。施設の賃貸借契約と支払を自動化することができるこの「おまけ」も、多くの企業にとって、なかなか魅力的に感じられるのではないだろうか。