今こそ戦略的に進める--改めて注目されるアウトソーシングの重要性 - (page 2)

五十嵐慎二・Michael Heideman(アクセンチュア)

2009-02-17 18:15

 企業の経営幹部は、これら3つのアウトソーシングアプローチを確立する必要がある。加えて、アウトソーシングを支援するプロバイダーの提案内容の有効性を慎重に判断する必要がある。

 その着目すべき判断材料として、プロジェクトの組織・管理手法、業務と人材のアウトソーシングモデルの選択(ニアショアなのか、オンショアなのか、それともオフショアなのか)、多様なアプリケーションの運用・保守と生産性を向上させるリエンジニアリング能力、優れたサービスデリバリー能力などが挙げられる。アウトソーシングプロバイダーがどのようにして価値を提供し、コスト削減を実現させるのか、その手法とメカニズムを把握することが、アウトソーシングを成功させるための必須条件と言えるだろう。

アウトソーシングの付加価値

 企業の経営幹部は、戦略的アウトソーシングの成果として、有能な人材の活用やコスト削減のほかにも、以下のようなメリットが得られることを理解する必要があるだろう。

  • 品質の標準化――企業はアウトソーシングを通して、より効果的にプロセスの品質を確保することが可能となる。たとえば、アクセンチュアではアウトソーシングを導入する際、顧客企業が一定レベルの品質を常に維持するために必要とされるリソース量を、正確に算出することができるよう支援している。この品質レベルは、顧客企業とアクセンチュアが締結するサービス品質保証(SLA)に記載され、予定されたコストでどの程度の品質レベルが可能かを早期に把握する上での判断材料とすることができる。
  • 優先順位の高いビジネスケイパビリティに注力――ITや財務、人事などのビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)により、従業員の生産性が一段と向上するだけでなく、従業員が専門領域の改善や、新たな技術の習得に取り組むことが可能となる。
  • 市場投入に要する期間短縮など、戦略目標の実現に貢献――アウトソーシングは、企業が24時間365日休みなく業務稼動することを実現する。また、出荷や納品を迅速に行い、機能豊富な製品をどの競合他社よりも早期に市場投入することを可能にする。さらに、実績あるアウトソーシングプロバイダーと提携することで、新興国や新市場への参入、新規販売チャネルの開拓、革新的なサービスの導入などを、コスト効率よく簡便に実行できるようになる。

 戦略的なアプローチによるアウトソーシングは、グローバル化を進める日本企業に新たな競争力をもたらし、差別化を実現するための切り札となると同時に、企業自らを変革することで、組織内にある潜在的な成長の可能性を引き出し、より高い成長を加速化させることができるだろう。

競争力を高める差別化のためのアウトソーシング

 より高い成長の実現を目指す日本企業、とりわけグローバル展開を積極的に進める日本企業の多くは、製品の供給、成長を目指した取り組み、そしてサービス内容の改革において万全を期す必要がある。そのための第一歩として考えられるのが、アウトソーシングを有効に活用してIT部門や重要なビジネスプロセスに変革をもたらすことだ。これらが改善され、低コスト・低リスクでありながら高い信頼性を備え、機能するようになれば、企業全体の戦略目標を実現する上で大きな役割を果たすことになると言えるだろう


五十嵐氏
筆者紹介

五十嵐慎二(IGARASHI Shinji)
アクセンチュア 通信・ハイテク本部 アウトソーシング担当 シニア・エグゼクティブ
大手電気メーカーのグローバル製販物流統合プロジェクトや消費者向けコンスーマAVグローバルサプライチェーンプロジェクトなどに参画。また、半導体メーカー経営情報・基幹システム(ERP)構築プロジェクトにも実行責任者として携わっている。


Heideman氏
筆者紹介

Michael Heideman
アクセンチュア 通信・ハイテク本部 アウトソーシング担当 シニア・エグゼクティブ
システムインテグレーションやアプリケーションアウトソーシング、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の分野を中心に担当してきている。アクセンチュアに勤務する前にも、北米において同様のアウトソーシング業務に携わった経験がある。

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