#6:叩き台なのか、最終版なのか?
私がIBMで働いていた時、会議の題材となるプレゼンテーション資料が「叩き台」なのか「最終版」なのかという点について、はっきりさせておくことを特に重要視する幹部がいた。彼は、プレゼンテーションに関するアイデアについて話し合ったり、叩き台をもとに検討する会議を厭っているわけではなかった。しかし、こういった会議の後に行われる会議では、彼は自身の上司のもとに持っていけるような最終版のプレゼンテーション資料が用意されていることを期待していたのだった。彼が最終版の資料を期待している会議の場に、叩き台の検討を行うつもりの担当者がいた場合、その会議は彼の言葉を借りると「全員にとって辛い時間を過ごす場になる」わけである。このため、上司が出席する会議に参加する場合には、その上司が期待しているものを確認しておくべきなのである。
#7:対象はメッセージなのかメッセンジャーなのか?
ソポクレスの執筆した『アンティゴネー』という劇の台詞に、「悪い知らせを持ってくる使者(メッセンジャー)を好む者などいない」というものがある。おそらく、この台詞から「メッセンジャーを撃つ」(shooting the messenger)という言い回しが生まれたのだろう。この言い回しは、詰まるところ、意にそぐわない意見を言われた人物が、その意見を表明した人物を攻撃するという行為を表現する際に用いられる。こういった状況はチャットルームや掲示板でもしばしば目にすることがある。例えば、Aさんが記事や引用を投稿する。それに対して意見を異にするBさんが「なんて愚かな意見だ」とか、ここには書けないようなコメントを書き込んだとする。こういった場合、Aさんは、Bさんの書いたコメントが引用に対するものではなく、Aさん個人に対する攻撃であると捉えてしまうこともあるのである。
誰かの意見を受けて自らの意見を表明する場合、その対象が何で、誰についてであるのかを明確にしておくべきである。また掲示板などに、自ら同意できない他者の意見や引用、記事を投稿する場合、同意できない旨を明確にしておくべきなのである。
#8:冗談なのか、本気なのか?
電子メールやテキストメッセージには、利点もあるとはいうものの、誤解を生む危険性が潜んでいる。というのも、コミュニケーション相手が目の前におらず、実際に面と向かって話す時のように相手が笑っているかどうかを判断することができないからである。このため、冗談のつもりで送信した内容が、真面目なこととして解釈されてしまうおそれもあるのだ。少なくとも、メッセージには顔文字を添えるべきだろう。私の場合、冗談を送信する際には念のために、その「前後に」"lol"(訳注:"laugh out loud"の略で日本語の「(笑)」にあたる)、あるいは中国語の場合には「呵呵」(発音は「he- he-」)と書き添えるようにしている。なお、冗談や顔文字は、相手のことを本当によく知っている場合にのみ使うようにすべきであり、そうでない場合には使用を避ける方がよいだろう。