落札仕様はEMCのSAN(Storage Area Network)環境のストレージシステム。ミッドレンジストレージの「EMC CLARiX CX3-40」と、ストレージ管理ソフト「EMC ControlCenter」(ECC)で構成。SAN環境でのリソース管理を自動化し、サービスレベルに合わせてサーバごとにI/O性能やRAID構成でディスク容量を設定、画像データを一元管理できるというシステムだ。
落札したのは2008年6月。しかし、その年末には容量が限界を迎える。結局、10月には稼働にこぎ着けたが、そこまでのスケジュールはタイトだった。
「ハードウェアに関しては入札前から各社のものを検討していましたが、それに伴うアプリケーションがどのくらいで構築できるかが課題になりました。デッドラインが決まっていますので、6月の落札はギリギリの線でした」(内田氏)
ショートタームとロングターム
EMCの新ストレージシステムが稼働したことで、放射線画像システムの容量は一気に32テラバイトにまで増強された。しかも、今後ディスクの追加で、最大120テラバイトまでは増強できるシステムになっている。拡張性も保証されている。
このCLARiX CX3-40が担うのは、放射線画像データを長期保存するための「ロングタームストレージ(LTS)」の部分だ。これに対し、従来のシーメンスのシステムを、直近のデータを保管する「ショートタームストレージ(STS)」として切り分けて使っている。
「撮影した画像データは各モダリティから8台のアプリケーションサーバに蓄えられシーメンスのSTSと今回のEMCのLTSへデータを同時コピーしているのです。バックアップを考え、同じデータを両方に持つという形です。そしてアプリケーションで制御し、STSからは一定期間の後、データが消去される仕組みになっています」(内田氏)
EMCのストレージシステム導入によって、画像参照の仕組みも多様化した。従来のウェブ参照に加え、ポータルサイトを立ち上げ、そこから見たいオリジナル画像を選択する専用アプリケーション「syngo Imaging」が加わった。
「従来の参照だけですと圧縮された画像しか見られませんでしたが、syngo Imagingでは最初に圧縮された画像をダウンロードし、医師が必要に応じてオリジナルの画像を見ることができるのです。つまり、ネットワークの負荷が軽減できるというわけです」(内田氏)
エンドユーザーから見れば、従来のシステムとほとんど変化はない。しかし、エンドユーザー向けのアプリケーションが新たに加わって利便性が向上した。エンドユーザーは、医師と医療スタッフ合わせて約1900人。この放射線画像システムは電子カルテと連動しており、通常、医師は患者データとひも付けられて画像を展開している。必要なオリジナル画像データが素早く参照できるようになったことはいうまでもない。
これに合わせ、データのマッピングも従来の画像の保存領域、ポータルサイトで参照するための画像保存領域、撮影した画像に対し読影した内容のレポーティングのためのデータの保存領域、そして今回新しく入れたLTSの画像保存領域という形に変えている。
(後編は2月26日に掲載予定です)