FCはストレージトラフィックに最適
FCがSANのプロトコルとして中心的な役割を果たしてきた理由はいくつかあるが、第一にFCが「ストレージトラフィックに適している」ということがあげられる。前述の通りFCではデータ損失を防ぐことができ、データサイズ(フレームサイズ)にかかわらず、効率的で低遅延の通信を実現している。ストレージトラフィック、つまりデータI/Oのインフラとして求められる要件を満たすという点で、このことは非常に重要である。
もうひとつのFCのメリットが、「導入・運用が容易」であるということだ。よく「FCは難しい」と言われるが、実際にはFCでは多くの処理が自動化されており、導入自体は非常に簡単である。
FCではデバイスのログイン、(FC)アドレスの取得、ネームサーバへのデバイス情報の登録、宛先デバイスの情報の取得など一連の処理(図7)は、すべてデバイスとスイッチの間で自動的に行われるため、管理者が特に意識する必要はない。FC-SANも“ネットワーク”であるから、当然「ネットワークアドレス」つまり「FCアドレス」も付与されるが、これを管理者が手動で設定する必要はない。
アドレスはデバイスがログインする際に、「ファブリック(1台もしくは複数のFCスイッチから構成される管理ネットワーク)」から自動的に割り当てられる。したがって、管理者はデバイスとスイッチをケーブルで接続するだけで、必要なすべての処理を完了できるのである。
さらに、FCが長年SANにおける標準プロトコルであるため、現状は管理ソフトウエアやSAN管理手法の多くも、FCを前提としたものになっている。また、前回紹介したストレージ仮想化技術といった新しいSAN関連の技術も、現状はFC-SANから提供されることが多い。
専門的エンジニアが少ないFC
一方FCのデメリットは、まずその詳細に精通している専門的なエンジニアが、EthernetやTCP/IPに比べると少ないことである。また、現在はSANで使用されることがほとんどであるため、Ethernetに比べて市場規模が小さい。
このため、一般にFCで使用される「ホストバスアダプタ」(Host Bus Adapter:HBA)やFCスイッチなどの機器(図8)の価格は、SANの普及に伴って下がってはきているものの、EthernetのNetwork Interface Card(NIC)やスイッチに比べると一般的には高い。
さらにFCは物理層から独自に規格化されており、現在はEthernetと互換性がない。そのため、FC専用のネットワークを構築する必要があり、特にデータセンターなど大規模なネットワークを構成する環境では、ネットワーク管理の負荷が大きくなる。これを解決する技術、つまりFCとEthernetを融合する技術として現在、「Fibre Channel over Ethernet(FCoE)」と呼ばれる規格の策定作業も進行中である(FCoEの詳細については、第5回で解説する予定)。

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第4回では「多様化するストレージネットワーク」をテーマに、現在注目されているストレージネットワーク関連の技術を紹介する予定である。次回もぜひ、お付き合いいただきたい。