隣の部の業務が見えません!
ここまで、受注から代金回収までの流れをプロセス志向的に見てきた。ただ、ご存じのように営業の仕事は、いきなり顧客の発注から始まるわけではない。顧客への提案活動や見積書の提出などを経て、ようやく発注してもらえるのである。
そこで、顧客からの見積依頼を起点として見積書が作成されるまでの流れの一例を図3として示そう。
図3の例は、まず営業部で営業担当が見積依頼を出し、上長(金額が大きい場合は部長あるい取締役)の承認を経て、製造部に製造原価を積算するよう依頼する。製造部では原価担当が積算を行い、その結果を上長、部長(金額が大きい場合は取締役)の承認を経て、原価見積が営業担当に渡される。営業担当は原価見積の上に利益を乗せて、見積書を作成。これを上長(金額が大きい場合は部長あるい取締役)の承認を経て、営業担当は顧客に見積書を提出する。
図3の例における課題は、営業部と製造部は地理的に離れた場所にある点だ。依頼書や見積書は電子メールでやり取りされており、そのために製造部において積算と承認のプロセスが進行している間は、営業部から進捗状況が見えにくい。
改善案としては、ワークフローシステムなどを利用して、見積依頼から見積書提出までの一連の業務フローを見える化するとともに、各部の管理担当を経由しないで直接、原価担当や営業担当に受け渡せる流れにすることが考えられる。
このように、晩飯づくりと同様に、仕事についても、フローチャートなどを用いて、いったんプロセス図に落として眺めてみると、重複している作業や改善すべきポイントなどが見つけやすくなるということが分かってもらえただろうか。
いくら「改善しなきゃならん! わが社も、どげんかせんといかん!」と叫んでみたところで、改善すべき具体的なポイントが見えていなければ、なにも進まない。業務を図にして考えてみると、それまで気づいていなかった部分が見えてきて、生産性が高まったり、コストを削減できる可能性が高まるのだ。
あなたも、まずは自分の身の回りの「仕事」をプロセス図にして、改善の余地がないか仲間たちと一緒に検討してみてはどうだろうか。