ソーシャル・パワーはアメリカの金融を救うか - (page 2)

飯田哲夫(電通国際情報サービス)

2009-03-09 18:30

ソーシャル・レンディングの社会的意義

 その点、個人がお金を貸すに当たっては、当然BIS規制の制約が無い上に、ソーシャル・レンディングを活用すれば銀行には出来ないリスク分散を図ることが出来る。もちろんこうした状況下においてお金を人に貸したいと思う人は減るだろうが、金融機関のように規制によって貸出を減らしたいという動機はない。こうした分散されたエネルギーを集約することで、現状のクレジット・クランチを逆回転させることは有り得ないだろうか?

 かつて、GoogleやAmazon.comなど、その集約する中身はそれぞれ異なるとはいえ、個人の力を集約して既存のビジネスを脅威に晒してきたWeb2.0系企業は多い。金融はそこから一番遠いような気もするが、規制そのものが金融を機能不全に陥らせているなか、その問題点を指摘するという観点においてもソーシャル・レンディングの果たす意義はあるだろう。

 しかし、このようにソーシャル・レンディングが果たすべき社会的意義が増大する中、米国証券取引委員会はソーシャル・レンディング・サイトへの監視を強め、現在複数のサイトが証券業登録の準備のために休眠状態となっている。まったくもって当局がサイト閉鎖へ追い込んだタイミングが悪すぎる。今後、順次再開すると思われるが、そのときにどこまで力を発揮できるかに期待したい。

筆者紹介

飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。92年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
※この連載に関するご意見、ご感想はzblog_iida@japan.cnet.com までお寄せ下さい。

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