「期待度ゼロ」という考え方
大きな落胆を避けるためには、もう1つ「過度の期待をしない」という考え方も必要です。この期待度の調整がうまくいけばいくほど、ストレスは少なくなります。では、人とかかわるうえで生じてしまう相手への期待心をどうやってコントロールするのでしょうか。
基本的には、期待度ゼロから始めるほうが喜びは大きいでしょう。「他人に対して期待度ゼロから始める」というと非常に冷たい人間のように思われるかもしれませんが、そうではありません。
「give and takeではなく、常にgive and giveを心掛けよ」
これはリーダー足り得る人格者から聞くことが多い言葉です。この言葉の意味は、「相手から得ることを期待せずに与え続けなさい」ということですね。そうすれば、きっといつかは自分に返ってくる。もちろん返ってくることを期待して与え続けるわけではありません。「与えられる」ということそのものに喜びを感じることがポイントです。ですから「他人に対して期待ゼロ」だから私もなにもしない、というわけではないのです。
また、自分なりの固定した尺度を持たないことも大切です。つまり、「友だちならここまでやって当然だろう」「親なら普通こうするだろう」という考えです。「期待度ゼロ」の考え方と同じではあるのですが、往々にしてこういう感覚を持っていると、期待通りの行動をしてくれない人に対して「裏切られた」と感じてしまいます。
しかし、それは単にあなたの思い込みにすぎないのです。あなたが常に相手の期待を裏切らないよう行動することはすばらしいですが、同じことを相手に求めても、それは無理だと思っていたほうが精神衛生上もよいでしょう。
ただ、会社員はちょっと事情が異なります。会社員は、当然のことながら会社なりの尺度で働く契約を結んでいるため、その契約に基づいた態度で勤務することが求められます。会社はあなたに期待して当然なのです。その期待に応えられない限り、その会社にあなたの居場所はない。厳しいようですが、会社はそう考えていると思ったほうが安全です。もっとも、これは双方の契約なので、会社もあなたに仕事を潤滑に進める環境を用意する必要はありますが、それ以上の対応については会社に対して「期待度ゼロ」の感覚を持つべきでしょう。
いかがでしょうか。今回は基本的な日常の考え方についてお話しました。次週は、趣を変えたお話をしましょう。
筆者紹介
田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
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