だが近年は「ファイルもしくはファイルサーバを一元管理する」という目的で、各拠点に存在していたファイルサーバを統合して、クライアントPCが遠隔地のファイルサーバにアクセスする形態が増えてきている。この際にLANだけではなく「WANを経由して」、ファイルアクセスを行う必要性がでてくるわけだが、LANと違ってWANには以下の特徴がある。
- 帯域が小さい
- 接続距離が長い
したがってSMB/CIFSやNFSをWAN環境で使用する場合、先述の「頻繁なデータのやり取り」が長距離のWANを往復することになり、結果としてパフォーマンス上の問題が顕在化する(図3)。一般にWAN経由でファイルサーバにアクセスした場合、ファイルを開くまでに相当の時間がかかることがあるが、これはSMB/CIFSやNFSの通信の仕組みに起因している。
等比級数的に増加するファイルサーバのデータ量
そこで現在、上記の問題を解決するために「WAN高速化装置」もしくは「WAFS(Wide Area File Service)」と呼ばれる製品が提供されている。これらの製品の特徴は、主に以下の2つである。
- WAN上の通信方式としてCIFS/NFSではない(ベンダー独自の)高速なプロトコルを使用することで、WANを経由するファイルアクセスのパフォーマンスを向上させる
- ファイルを一時保存(キャッシュ)することで、WANを経由せずにファイルにアクセスさせる。ここでキャッシュされたファイルは、ファイルサーバ上に保存されている実体ファイルの“コピー”にすぎないため、ファイルの管理は一元化することが可能である
また、Windows Server 2008やWindows Vistaでは前述の問題を改善した「SMB 2.0」が実装されており、両OSを導入している環境であればファイルアクセスをより高速に実行することも可能である(図4)。
今日ファイルサーバ上に保存されるデータ量は、等比級数的に増加している。これに伴ってファイルサーバ自体の台数も増加しており、ファイルやファイルサーバの運用管理が大きな課題となってきている。この問題に対処する技術として、現在以下の機能を提供する製品が、ベンダー各社から提供されている(図5)。
- 複数のファイルサーバをあたかも1台のファイルサーバのように見立てて、ファイルアクセスの一元化を実現する「グローバルネームスペース」
- ファイルの使用頻度や容量、アクセス日時などから規定されるポリシーにしたがって、プライマリサーバとバックアップサーバとの間でファイルを自動的に移動する「ファイルライフサイクル管理」
ファイルサーバの管理はサーバ管理全体からみても非常に大きな位置を占めており、上記のような技術や製品を利用してファイルやファイルサーバを効率的に管理することが、今後はますます求められるだろう。
(後編は3月17日掲載予定です)