3月15日付けの日本経済新聞9面に『自国語守れ、政策動く – 英語「一人勝ち」に対抗』という記事があった。グローバル化の急速な進展が英語を「公用語」化する流れに対し、各国政府が危機感を抱いて自国言語の保護に走っていることを紹介した記事である。
例えば人口の8割が外国人で英語が共通語化しつつあるドバイでは、政府が飲食店にアラビア語メニューを用意するよう警告書を送って飲食店への対応を迫った。一方、フランス政府は金融用語にはフランス語を使うよう国民に通達を出し、金融界から不評を買っている。このフランスのケース、14の言葉が具体的に挙げられていて『「ヘッジファンド」は「フォンスペキュラティフ」、「クレジットクランチ」は「ルセルマン・ドゥ・クレディ」』なのだそうだ。
言語と文化
各国が言語を大切にする1つの理由として、言語と文化の密接な繋がりがあると考えられる。言語は物事の表現方法であり、つまりはものの見方を規定するという点で、それを話す人の文化を規定すると言える。
酒井邦嘉氏が『言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか』(62ページ)で、いくつか具体的な例を挙げている。例えば、エスキモー語が「雪」を総称で使うことはなく、様々な雪の様態をそれぞれに表現するという話は有名だ。身近なところでも、日本語が兄弟や姉妹と表現する際に年齢の上下関係を明確にするのに対し、英語のbrotherやsisterが年齢の上下を明示していないことなどがある。(ただし、言語が人の考え方を支配するとする「言語的決定論」に関し、酒井氏は「仮説の域を出ない」と同書では主張している。)