IT資源をデータセンターに集約--FCとEthernet統合した「FCoE/CEE」の重要性(前編) - (page 3)

辻 哲也(ブロケード コミュニケーションズ システムズ)

2009-03-24 20:15

 CEEでは既存Ethernetの拡張として、以下の技術が議論されている。

  • PFC(Priority-based Flow Control:図5)
    Ethernetでは、フロー制御の方式として「PAUSEフレーム」を採用している(IEEE 802.3X)。これは受信側でトラフィックの処理に必要なバッファを確保できない場合に、PAUSEフレームを送信することでデータ送信を“一時停止”させるものだ。Pauseフレームは、現行のEthernetの仕様では「物理ポート(リンク)単位」で処理される。つまり、あるリンク上でさまざまなトラフィックが混在する環境であっても、Pauseフレームによってすべてが一斉に送信停止となってしまう。これでは、さまざまなトラフィックが混在することを前提とする統合ネットワーク、つまりCEEには適さない。そこで単一ポート内に「複数の送受信キュー」を持たせ、さまざまなサービス要求を持つトラフィックと対応づけるための仕組みとして、「PFC(Priority-based Flow Control)」が規定されている(IEEE 802.1Qbb)
    PFCでは8個の「プライオリティ」が規定され、ストレージI/OやLANなどのトラフィックをこれらのいずれかのプライオリティと対応づける。特定のフローで輻輳(ふくそう)が発生した場合、受信側ポートは輻輳の発生したプライオリティを指定してPAUSEフレームを送信する。この際に、指定されたプライオリティ以外の通信はそのまま送信可能であり、通信種別にあわせたフロー制御を実現できる
図5 図5:Priority-based Flow Control(PFC)
  • ETS(Enhanced Transmission Selection:図6)
    前述のPFCでフロー制御をプライオリティ単位で行う仕組みの基本は定義されたが、PFCだけではフロー間の優先順位や帯域ポリシーが決まっていないため、QoS(Quality of Services)を実現する仕組みとしては不十分である。そこで、プライオリティ間の「帯域使用ポリシー」を規定しているのが、「ETS(Enhanced Transmission Selection)」である(IEEE 802.1Qaz)。各プライオリティがETSで規定される16個の「プライオリティグループ」に対応づけられ、このプライオリティグループに、さまざまなアプリケーションを対応させることができる
図6 図6:Enhanced Transmission Selection(ETS)
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  • CN(Congestion Notification:図7)
    Ethernetで「受信ポートで輻輳が発生している」状況では、フレーム受信のキューがあふれてしまう場合がある。これに対処するため、前述のPFCでフレーム送信の一時停止を行い、フレーム破棄を回避しようとする。ただし、「タイマ」を前提としたPauseフレームの処理では、タイマで指定された時間内で受信バッファの回復を「保証する」ことはできない。したがって、受信ポート側で輻輳を管理するか、輻輳を通知する仕組みが提供されるのが望ましい。このための仕組みが、「CN(Congestion Notification)」である(IEEE 802.1Qau)。現行のEthernetでは、「受信側がデータロスなしで帯域制御する仕組み」が存在しないため、CNが必要とされる。CNは輻輳が発生した地点からフレームを送信しているポートに対して行われる。なお、「クレジット」という方式でフロー制御を行うFCでは、このような問題は発生しない
図7 図7:Congestion Notification(CN)
  • DCBX(Data Center Bridge eXchange protocol:図8)
    前述の通りCEEでは多くの仕組みが追加されており、それらが個別のパラメータで動作している。このため、「ファブリック全体でパラメータの整合性を保持する」仕組みが必要となる。ファブリックで固有なパラメータの交換を行うための仕組みが、「DCBX(DataCenter Bridge eXchange protocol)」である(IEEE 802.1 DCB)。DCBXは既存のLink Layer Discovery Protocol(LLDP)の拡張でPFCやプライオリティグループ、CNなどCEEで必要とする各種のパラメータをデバイスやスイッチ間で交換するためのプロトコルである。DCBXによって、CEEファブリック全体の整合性を保つことが可能となる
図8 図8:Data Center Bridge eXchange protocol(DCBX)
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  • TRILL(TRansparent Interconnects of Lots of Links:図9)
    図9 図9:TRansparent Interconnects of Lots of Links(TRILL)
    ※画像をクリックすると拡大して表示されます
    現行のEthernetでは、ファブリック内で「マルチパス」を構成できない。レイヤ2接続でループを構成した場合には「ブロードキャストストーム」が発生してしまうため、通常はスパニングツリープロトコルで、この問題を回避している。ただしその結果、コスト等価なパスを提供できず、ネットワーク全体として最短経路での通信を保証することもマルチパスで「ロードバランス」も行うこともできない。そこでCEE上でのマルチパスルーティングに関する標準として、「TRILL(TRansparent Interconnects of Lots of Links)」がIETF(Internet Engineering Task Force)に提案されている。TRILLの特徴は「煩雑な設定が不要であること」「マルチパスルーティングが可能であること」、そしてその結果として「ファブリック全体のスループットを向上できること」である

 よく誤解されるが、CEEはあくまでも“データセンター内での使用”を前提としたEthernetの拡張であり、すべてのEthernetがCEEに置き換わるわけではない。またCEEは、10Gbps以上の広帯域を前提として規格化されている。通常のEthernetとは異なる部分で使用されるということを、ぜひ知っておいて頂きたい。

(後編は3月31日掲載予定です)

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