アメリカのヒーロー像を理解する--エリック松永の英語道場(21) - (page 2)

エリック松永

2009-03-30 08:00

病魔を受け入れ、立ち向かう

 CFSの治療にはこれといった治療方法があるわけではないので、時間をかけて着実に治療しなければなりません。周囲の人達の温かい愛がこの病気の治療には必要なのです。Keithは、友人や家族、特に夫人のRose Anneに支えられ、長時間かけて、ついに立ち直るきっかけをつかむことができました。それは、「病魔を受け入れる」と決心したことです。

I am telling the disease I know you're here, I've accept your presence and I'm still going ahead with this work.

病気の奴に言ってやったんだ。お前がここにいるのはわかった。お前の存在を受け入れよう。でも、僕はこの仕事(音楽)で前に進むからと。

 病魔を受け入れたとは言え、集中力は1〜2分しか続かない状況です。ひどいけん怠感に襲われながらも、Keithは感謝の気持ちを曲にこめ、Rose Anneに最高のクリスマスプレゼントを贈ろうとしました。それはKeithにとって前進を意味し、愛する人達への感謝の気持ちで満ちあふれていたからこそできることでした。まさに逆境に勇気をもって立ち向かう姿がそこにありました。

But to start the work, I wanna make it as personal as possible. Maybe in December 1997, I recorded "Melody at Night". That was a monumental effort for a Christmas present. I couldn't leave the house, and I didn't know what to get for Rose Anne.

仕事を始めるにあたって、できるだけ個人的なものから始めたかったんだ。確か1997年の12月だった。僕は「メロディー アット ナイト」を録音した。とんでもなく頑張ったクリスマスプレゼントだったんだよ。家からは出られなかったけれど、Rose Anneにどうしても何かあげたくて。

 しかし、CFSの病気の苦しみは急に治まるものではありません。Keithはその苦しみを受け入れ、自分の演奏をテープに録音していったのです。その曲に対する執念は、まさに逆境に立ち向かう姿であると私は思います。

Every time I got complex, I stopped. I wanted it to stay about the song. I was transforming the disease into a song.

強迫観念に駆られると、すぐに演奏をやめた。曲の中に身を投じたかったからね。僕は病気を曲に転化させたんだ。

 Keithが愛を込めて録音した曲は、かつてのスタンダードの名曲がメインで、それはあたかもKeith自身の人生を振り返るようでもありました。そのテープはクリスマスプレゼントとしてRose Anneに手渡されました。

 プレゼントを受け取った時のことをRose Anneは次のように語っています。

That Christmas day, we each gave each other these little boxes. My gift was in this tiny little box and his was just a couple of DAT rapped, so it was about that big and ribbon on it. I've just broken down with tears. It was just too much, too romantic and too sweet.

クリスマスに2人で小さな箱を交換したの。私のはこんなちっちゃな箱で、彼のは音声テープが何本かラッピングされてて。大きさはこれくらいでリボンがついていた。泣き崩れてしまったわ。あまりに素晴らしくてロマンチックで素敵なプレゼントに。

 逆境に立ち向かう勇敢な姿、そしてそれを支える愛。今回はKeith Jarrettというアーティストを通して実感できましたでしょうか。ちなみに、Rose Anneに手渡されたテープは後に「Melody at Night with You」としてリリースされました。アルバムの最初のページには、Keithの言葉がこう記されていました(あまりに素敵な言葉なので訳はつけません)。

For Rose Anne
Who heard the music,
Then gave it back to me.

Peace out,
Eric

Eric
筆者紹介

エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。

イラストレーター: まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。

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