さらに今回の店舗実験では、バックヤードと店舗間の出入り口、レジ、陳列棚、試着室など、店舗の各所にセンサーを設置。個別の商品が店舗入荷後にどのように動くかのデータを詳細に取得することを試みている。
住金物産、繊維カンパニーSCM・事業開発部部長の山内秀樹氏は、「バックヤードに入荷したものの、店頭に出ずに眠ってしまっている商品がすぐさま把握できるため、販売機会のロスを削減できる。また、顧客が手に取ったり、試着したりしたものの、購入に至らなかったような商品を具体的に把握することで、取得したデータを魅力的な商品企画や店舗運営に活用できるようになる」とする。
現状の実験モデルでは、センサーの読み取り精度の問題などもあり、「実用にあたっては、さらなる改良が必要」とのことだが、従来のSKU単位での商品管理から、商品個体のシリアルベースでの管理へと移行することによって、単なる省力化や物流の効率化のみならず、経営から商品企画、販売企画など、さまざまなフェーズでの戦略的なデータ活用が可能になることが期待されている。
コスト面での壁もクリア可能な水準に
現状、RFIDが埋め込まれた商品タグは、通常のものと比較して、1枚あたり10円から20円ほど割高になるという。電子タグの本格的な普及にあたって、タグ当たりの単価の高さは阻害要因として指摘されているが、今後、より大規模な導入が進めば、単価はさらに下がると見られている。また、RFIDの導入が極めて効果的であると認められる業種業界においては、得られる効果によって、電子タグ自体のコストは相殺可能なレベルになりつつあるという見方もある。
同プロジェクトでは、2010年以降、さらに大規模な運用実証を行う計画だ。店舗数の増加によって、大量に生成されるデータのリアルタイム処理といったシステム上の問題などもクリアしつつ、アパレル業界全体、さらには他業界との共同運用などを目指した普及活動を引き続き行っていくとしている。
