業界特有の分割検収と複合取引にどう対応すべきか?(後編)

木村忠昭(アドライト) 2009年04月17日 08時00分

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前編はこちらです

 IT業界やソフトウェア業界での重要テーマである「複合取引」についても触れたい。複合取引は、ソフトウェアの開発とハードウェアの販売・サービスの提供などを併せて行うような種類の取引だ。たとえば、受注制作のソフトウェアであるシステム開発請負契約に保守サービスが含まれているケースや、サーバのようなハードウェアの中に開発したソフトウェアをインストールしたような形で両者を併せて販売するようなケースである。

タイミングと計上方法が異なる

 このような複合取引を同一の契約書などで行う場合に、これらをまとめて「ソフトウェア一式」として契約し、すべての売り上げを同時に計上してしまうと、収益認識すなわち売上計上に関して問題が生じることがある。なぜなら、これらの取引については会計上の性質が異なり、売り上げを計上すべきタイミングと売り上げの計上方法が異なるからだ。

 具体的には、ソフトウェアの開発については、受託制作の場合には原則として工事進行基準によりプロジェクトの進捗に合わせて売り上げを計上することになる。成果の確実性を満たさないような場合には、例外的に工事完成基準によって開発プロジェクトの完成時に一括して売り上げを計上することも考えられる。一方、自社のパッケージソフトを販売するような場合には、そのパッケージソフトの販売時に売り上げを計上することになるが、その開発コストについては、「研究開発費等に関する会計基準」に基づき、市場販売目的などの適切な区分で所定の会計処理を行う必要があることに留意が必要だ。

 また、ハードウェアの販売については、汎用品を納めた場合には納品時、または大型のハードウェアをカスタマイズして納品するような場合には検収時に、その財を販売した時点が売上計上のタイミングとなる。そして、保守メンテナンスのように、開発者がサービスを提供するような場合には、そのサービスの提供期間に応じて売り上げを計上していくようなことも考えられる。

 よって、それぞれの取引ごとに契約書の対価を区分するなどして、各取引の性質に応じて適切な会計処理を行っていく必要がある。このように、複合取引で適切な会計処理を行い売上計上を行っていくためには、それぞれの取引ごとに会計処理が行えるよう、契約書の見直しが必要になる場合がある。この際にも、経済産業省から公表されている「情報システム・モデル取引・契約書」におけるソフトウェア開発プロジェクト契約のひな形が参考になる。

 すべての顧客(ユーザー)に均一に提供されるような無償の保守サービスやトレーニングサービスなどについては、主たるソフトウェア販売などの取引に付随して提供される取引として、そのメインのソフトウェア販売の売上計上時に一体として会計処理されることになることもポイントだ。

図:複合取引における留意点

総額か純額か

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