ビジネスプロセス・マネジメント(BPM)は、ビジネスの効率を高め、競合優位性を維持するための継続的な取り組みであり、その実行にはITによる支援が不可欠だ。景気が後退期にある現在において、コストをかけてBPMに取り組むべき理由は何なのだろうか。その取り組みは、ビジネスに何らかのメリットをもたらすものなのだろうか。
2007年に買収したEAI/BPMプラットフォーム「webMethods」を中心として、現在BPMを中心としたビジネスを展開している独Software AGのCEOであるKarl-Heinz Streibich氏と、同社日本法人の代表取締役であるColin Brookes氏に話を聞いた。(回答は、主にStreibich氏によるもの。Brookes氏による回答については、項前に名前を示している)
− Software AGが取り組んでいるBPMには、ITと直接関係しない「経営手法」としての意味と、そのプロセスをITにいかに落とし込むかの意味があると思いますが、まずは「手法」としてのBPMについて伺います。Software AGは、その言葉をどのように定義していますか。また、BPMは、企業にどういったメリットを与えると考えていますか。
その意味での「ビジネスプロセス」とは、「ワークフロー」のことです。企業内のプロセスを自動化するために使われるのがワークフローとなります。
従来型の会社の組織というのは、完全に「部門」ごとに分かれていました。これまでは「プロセスを自動化した」といっても、ただ単に、別々の部門内での自動化が行われていただけで、業務を行う人と人とが関係するプロセスの部分は、自動化されていないという状況でした。最近になって、実は、「ビジネスプロセス」とは、人と人とのインタラクションと、部門間のプロセスの組み合わせであることが、はっきりと分かってきました。
ひとつ例を挙げましょう。ある会社では、ある1つのビジネスプロセスの完了までに2週間かかっていました。ところが、調べてみると、この2週間のうち80%が「死んだ時間」だったことが分かりました。この「死んだ時間」は、各部門が離れて存在しているために「何も起きていない時間」として費やされていたのです。業務においては、常に部門をまたがるところで無駄な時間が発生しています。それは、セールスの承認が必要なとき、新社員のリクルート、製品の出荷、注文の処理などあらゆる側面においてです。
− その「80%の死んだ時間」を削減できるところにBPMのメリットがあるということですか。
そうです。BPMによって、30日間かかるプロセスを3日に短縮できるということです。当社は、グローバルな会社ですが、大きなディールになってくると、承認のサインを、3、4カ国にまたがる、5つや6つの部門で行わなければならないといった状況が起こります。従来のやり方でやろうとすれば、2週間ほどもかかるプロセスです。しかし、自動化がうまくいっていれば、それは2時間で終わってしまうのです。
− そうした「プロセス改善」にITが深くかかわるべき理由は何でしょうか。
ITがもたらすメリットは、プロセスを実装するところにあります。ビジネスプロセスにはいろんなステップがあり、それぞれのプロセスにはバックオフィスからのデータが必要になります。プロセスはビジネスによって定義され、それを実行するのがITの役割となります。
Software AGでは、新たな取り組みとなる「ソーシャルBPM」を、10月に市場に投入します。このソーシャルBPMを使うと、FacebookのようなSNSと同様の使い勝手で、効率的にビジネスプロセスの定義が可能になります。われわれは、世界最高クラスのBPMを既に持っていますが、今後さらに、そのレベルは上がっていきます。