オラクルのサン買収で富士通はどうなる?

松岡功

2009-04-21 11:21

 富士通にとって、Sun Microsystemsの買収先がIBMではなくOracleだったのは、“不幸中の幸い”だったのではなかろうか。

 富士通とSunは長年、UNIXサーバ事業で販売を中心としたパートナー関係にあり、ここ数年は開発・製造も共同で行っている、いわば“運命共同体”の仲だ。それだけに、Sunの買収先がどこになるかで、自らのスタンスも大きく変わりかねない。

 IBMがSunと買収交渉を行っている最中には、富士通の野副州旦社長が記者会見でこう語っていた。

 「IBMがSunをどのような形で買収するかで我々の対応の仕方も変わってくるが、いずれにしても顧客起点から離れた方向に進むことは考えられない。どういう形になろうと、富士通はこれまで通り顧客資産を守っていくということを、IBMともきちんと話し合っていくつもりだ」

 このコメントは「仮に買収交渉が成立したとして……」と問われてのものだったが、顧客の動揺を和らげようという思いが滲み出ていた。

 富士通のこのスタンスは、最終的にSunの買収先となったOracleに対しても変わらないだろう。ただ、Sunと同じUNIXサーバ事業を展開しているIBMが相手だと、事業の統合・整理で梯子を外される事態も覚悟する必要があったが、Oracleが相手だとその心配はまずないといえる。

 富士通とOracleの関係は、いわば右手で握手しながら左手で殴り合っているようなものだ。富士通は顧客の要望に応じてOracleのソフトウェア製品を扱っている一方、ソフトウェアの事業領域では競合する部分もある。

 では、今回OracleがSunを買収したことで、富士通とOracleの関係に変化は起こりうるのか。このところのSunをめぐる買収の一連の動きに詳しい業界関係者はこう推測している。

 「Oracleにとっては、Sunの持つハードウェアとOSのプラットフォーム事業が買収による最大のビジネスの攻めどころとなるが、一方で、ともすれば足かせになりかねない。とりわけ開発資金がかさむSPARCサーバ事業をどのようにドライブしていくか。この点ではSunとSPARCサーバを共同開発している富士通との間で、新たな提携形態が浮上してくる可能性もありうる」

 Sunが取り持つ富士通とOracleの関係も、今回の買収劇がもたらす注目点といえそうだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  4. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  5. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]