経済低迷期の勝者になるためのIT戦略とは
後半は、「景気の後退期における生き残りを支援するスマートなIT戦略」と題し、現在の経済状況において、企業がITに対していかに投資を行うべきかについての話題に移った。
Singh氏は、ある調査会社の「市場の低迷期に上位4分の1に属する企業は、その後3年間、市場での高い地位を維持している」という調査結果に言及。景気低迷期に飛躍できる企業こそが、真にスマートな企業であるとし、テクノロジーの活用による競争力の増大を訴えた。
その意味で、「景気低迷期は、戦略的なITロードマップの策定を行う時機である」と述べ、直近に高い効果が上がるポイントに集中した「短期的な戦略」と、将来的なビジネスの拡大を支えるインフラを構築するための「長期的な戦略」の双方が必要であるとした。
短期的な戦略の核になるのは、「最もリターンが多くなる分野への集中投資」である。Singh氏は、マッキンゼーによる「不況期におけるITマネジメント」に関するレポートをひきつつ、従来型の「ITコスト削減」による効果と比較して、投資先の集中による効果のほうが最大で10倍近くになる点に言及。特に効果的な分野は、「販売・価格戦略」や「サプライチェーンマネジメント(SCM)関連」であることに触れた。
実際に、Hewlett-Packard、Tata Motors、Wells Fargo、Alaska Airlinesといった同社の顧客が、ディールマネジメントソリューション、ロイヤリティ管理ソリューション、人材管理(HRM)ソリューション、SCMソリューションなどを用いて、顧客満足度を上げ、利益を向上させている事例を披露した。
長期的な戦略については、ITシステム全体の簡素化と自動化、そして新たなテクノロジの導入がカギになるという。Singh氏は、同社のビジネスアプリケーションのロードマップを披露。E-Business Suite、PeopleSoft Enterprise、Siebel、JD Edwardsといった現行のアプリケーション群については、「Applications Unlimited」ポリシーに基づいた、将来的なバージョンアップの提供とサポートによる投資の保護を約束すると同時に、新たなバージョンのリリースごとに、TCOが低減されている点にも触れた。例えば、Siebel CRMにおいては、7.0から8.1へのバージョンアップでTCOが約49%まで削減されているという。

現行製品に対する施策の次に控えているのは、Oracle Fusion MiddlewareとAIAによるアプリケーション統合、そして、将来的なリリースが予定されている「Fusion Applications」への進化だ。システムアーキテクチャを標準技術をベースとした完全なSOAへと段階的に移行していくことにより、徹底した自動化が行われ、大幅な柔軟性の向上と管理の簡素化が実現する。この、Oracleが描くシナリオに対する支持を求めながら、講演は締めくくられた。