工事進行基準と原価計算
今までの例において、開発プロジェクトの製造原価の総額を求めるための個別原価計算をみてきた。最後に、個別原価計算と工事進行基準の関係について考えてみたい。
原価計算の期間は原則として1カ月であるため、1カ月単位で各プロジェクトの原価計算を行い、費用を集計していく必要がある。そうなると、原価比例法を前提にした場合、毎月の各プロジェクトの製造原価を積み上げることで、原価実績を算出し工事原価総額との割合において工事進捗度を見積もり、その工事進捗度に工事収益総額すなわちプロジェクト受注額を乗じて毎月の工事収益を算定することになる。
このように考えると、工事進行基準において実際に工事収益を算出する際にも、毎月のプロジェクト別の原価計算がそのベースになっていることが分かるはずだ。適切な原価計算制度が構築されて初めて、工事進行基準の適用が可能になるというのは、こういった意味も含まれている。

今回は、工事進行基準の前提となる個別原価計算について、「原価計算基準」に基づく一般的な手法をまとめた。この最低限のルールに準拠したうえで、企業の置かれた業界や特徴を勘案して、各社ごとのプロジェクト管理体制を構築していく必要があり、必ずしも答えはひとつではない。次回は、具体的なプロジェクト管理の事例や工事進行基準の適用事例を見ながら、必要となる管理体制について考えていきたい。
「工事進行基準の対応状況に関する実態調査」における120社の回答結果を踏まえ、工事進行基準適用後の具体的対応策と経営管理体制をテーマに、各分野のプロフェッショナルが登壇する特別セミナーが開催されます。
経営管理現場での支援事例と120社の対応事例から読みとく
「工事進行基準適用後プロジェクト管理セミナー」
- 主催:株式会社アドライト
- 開催日時:2009年5月26日(火)13時30分〜17時(受付開始:13時15分)
- 場所:泉ガーデンコンファレンスセンター(東京港区、南北線六本木一丁目駅直結)
- 内容:
第1部 基調講演「成長企業のコーポレートガバナンスと経営管理体制」
監査法人トーマツ マネージャー 公認会計士 上杉 徹也
第2部 「システム導入における工事進行基準プロジェクト管理のしくみ作り」
エンプレックス株式会社 執行役員 藤田 勝利
第3部 「120社の対応実態からみる工事進行基準の具体的対応策」
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- 対象:ソフトウェア・IT系企業を中心とする財務・経理部門、経営企画部門責任者
- 料金:2万7500円(税込、事前振込)
イベント詳細、お申し込みはこちらまで

筆者紹介
木村忠昭(KIMURA Tadaaki)
株式会社アドライト代表取締役社長/公認会計士
東京大学大学院経済学研究科にて経営学(管理会計)を専攻し、修士号を取得。大学院卒業後、大手監査法人に入社し、株式公開支援業務・法定監査業務を担当する。
2008年、株式会社アドライトを創業。管理・会計・財務面での企業研修プログラムの提供をはじめとする経営コンサルティングなどを展開している。