世界的な金融危機の波及による経済悪化がビジネスに根深い影響を及ぼす中、企業はさらなるコストダウンや業務プロセスの見直しに取り組もうとしている。しかし、業務のどこを見直せばいいのかわからない、あるいは業務プロセスの変更にシステムが柔軟に対応できないといった悩みも多い。
業務改革の推進を命じられた担当者の中にも、最初の一歩を踏み出すには何から始めればいいのか、あるいはBPMの実現にあたって、ITをどのように活用すればいいのかについて不安を抱いている人もいるかもしれない。
そこで今回は、BPMと、その推進に不可欠なIT実装の方法論であるSOA(サービス指向アーキテクチャ)の関係についての初歩的な疑問を専門家に聞いてみた。専門家のアドバイスを参考にしつつ、自社のBPMプロジェクトの推進に取り組んでみてほしい。
疑問1:そもそもBPM実現に必要なITって何?
これまでも繰り返し述べてきたように、BPMは業務プロセスの遂行にあたって、「分析・設計」(Plan)、「実行」(Do)、「モニタリング」(Check)、「評価・改善」(Action)というPDCAサイクルを迅速に回せる仕組みを整え、かつそれを組織に浸透させるためのマネジメントの考え方だ。この考え方にのっとって業務改善を行うには、目的や視点に合せた仕組みを整え、状況を正確かつリアルタイムに計測・分析できる環境があることが望ましい。
そうした環境の構築を支援するITツールの例としては、業務の分析・可視化を実現する「モデリングツール」、モデリングした業務情報をスムーズにIT側の部品とひもづける「インテグレーションツール」、プロセスに従って動く実行環境の「プロセス駆動エンジン」、そして実行された結果としての業務パフォーマンスを監視する「モニタリングツール」などがある。
ただし、企業によって業務改善の視点や目的はさまざまだ。柔軟性の高い業務基盤が求められるケースや、プロセスの可視化による迅速な意思決定が求められるケース、あるいは法令や規制に従ってリスク管理が求められるケースなどがある。目的が「変化への対応」か「パフォーマンス」か「コンプライアンス」かによって、業務改善のポイントは違ってくる。

「業務プロセスの変化に対し、情報システムが硬直化して改革の足かせとなっている例も多い」と語るのは、SOA化の支援を行うユーフィットのコンサルティングビジネス部でコンサルタントを務める入山秀樹氏だ。
入山氏は、2月に開催された「プロセス志向イノベーションフォーラム」で、BPM実現におけるITの活用について解説。ITが業務改善の足かせとならないために、システムを部品化し、業務視点で組み替えられるようにすることの重要性を説いた。
「業務サイドからシステム化のリクエストがあってもすぐに対応でき、パフォーマンスやコンプライアンスなどの目的に応じた実行制御のできるITの仕組み(アーキテクチャ)が必要となる。それがSOAである」(入山氏)