ブレードPCと仮想PCの間をつなぐ--日本HPとシトリックスが仮想化事業で協業

日高彰 2009年04月24日 23時03分

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 日本ヒューレット・パッカード(HP)とシトリックス・システムズ・ジャパンは4月24日、クライアント仮想化事業での協業を発表した。HPのハードウェアにシトリックスの仮想化ソリューションを組み合わせ、ブレードPC方式と仮想PC方式を混在させた仮想クライアント環境を提供する。

コスト削減と情報保護を旗印に拡大するクライアント仮想化市場

 クライアントPCの運用や管理コスト削減、個人情報や機密情報の漏えいリスクの低減などを目的としたクライアント仮想化ソリューションの市場が拡大している。

 データセンターに仮想的なPC環境を構築し、ユーザーはシンクライアントから仮想PCにアクセスしてアプリケーションやデータを利用する形態をとることで、システム管理者が各PCの環境を一元的に管理することが可能となり、クライアントにはデータが残らないため情報漏えいを防ぐこともできる。

HPとシトリックス、それぞれの課題

 こうした環境のなか、HPではブレードPCとシンクライアントで構成されるクライアント仮想化ソリューションを提供している。

 この方式は1ユーザーに対して1台の物理的なブレードPCが割り当てられるので、負荷の高い処理を行っても他ユーザーのパフォーマンスに影響を与えないことや、既存PCからの移行が比較的容易であることがメリットとなる。

 しかし、ブレード間で負荷を分散することができない、同時利用ユーザー数分のブレードPCの設置スペースが必要になるといった課題があった。

 一方、1台のコンピュータ上で複数のOSを動作させるハイパーバイザを利用した仮想PC環境も、ハードウェアの性能向上に伴って適用可能な範囲が広がってきた。

 シトリックスの「XenDesktop」ではこの方式でのクライアント仮想化を実現可能で、ユーザー毎の負荷の変化に柔軟に対応でき、システム設置スペースの利用効率が高いのがメリットとなる。

 しかし、OSの実行環境が物理的なPCから仮想PCへと変化するので、アプリケーションの互換性などの理由で、ブレードPC方式に比べ従来のPCからの移行が難しい場合があった。

ブレードPCと仮想PC、両方式のメリットと課題 ブレードPCと仮想PC、両方式のメリットと課題

ユーザーごとに最適なリソースを振り分ける「DDC」

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏(左)と、シトリックス・システムズ・ジャパン取締役会長の大古俊輔氏 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長の松本光吉氏(左)と、シトリックス・システムズ・ジャパン取締役会長の大古俊輔氏

 今回の両社の協業では、HPのサーバやシンクライアントにXenDesktopのライセンスをバンドルすることで、ブレードPC方式と仮想PC方式の両方をシームレスに利用可能な環境を提供する。

 両社が提供するソリューションでは、XenDesktopに含まれるDesktop Delivery Controller(DDC)の機能によって、ユーザー毎に最適なリソースを割り当てることが可能。CADなどハードウェア負荷が高い専門的な業務を行うユーザーと、オフィスソフトなど比較的負荷の軽い一般業務を行うユーザーをあらかじめ属性分けしておくことで、シンクライアントがDDCへアクセスした際、専門業務ユーザーはブレードPCに、一般業務ユーザーは仮想PCにそれぞれ自動的に接続される。

 いずれのユーザーもログイン画面は共通のため、ユーザは自分の利用している環境がブレードPCであるか仮想PCであるかを意識することはないが、業務内容によって環境を選択できるよう、知識のあるユーザーに対してはログイン時に接続先の選択画面を表示することもできる。

 このような仕組みを用意することで、企業内の各部署によって異なる要求性能をひとつの仮想化ソリューションの中で提供することが可能になる。

 日本HPとシトリックスでは、両社の本社内にブレードPCと仮想PCが混在する実機検証環境を設置して導入サポートを行うほか、今後セミナーやイベント出展などのプロモーションを共同で実施する。また、6月30日までHPのシンクライアント「t5630 Thin client」「HP 2533t Mobile Thin Client」を約2〜3割引の特別価格で販売する。

コネクションブローカー(DDC)はユーザーに応じて仮想PC、ブレードPCをそれぞれ割り当てる コネクションブローカー(DDC)はユーザーに応じて仮想PC、ブレードPCをそれぞれ割り当てる

ブレードPCと仮想PCの間をつなぐ協業

 シトリックス・システムズ・ジャパン取締役会長の大古俊輔氏は、「移行が容易で各ユーザーのリソースを担保できるブレードPC方式と、リソースの有効活用や将来の拡張性、柔軟性で優れる仮想PC方式をハイブリッド型で提供することで、アプリケーション毎の要求に応じた適材適所のソリューションをお届けできる」と話し、今回の協業によってクライアント仮想化というビジネストレンドをより幅広い顧客に提供可能になると強調した。

 日本HP 執行役員(パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部長)の松本光吉氏は、これまで同社が主に手がけてきたブレードPC型だけでなく、導入実績の積み重ねやソフトウェアの成熟によって今後は仮想PC型も広がるとの見方を示した。ハイブリッド型のシステムは「(ブレードPCから仮想PCへの)過渡的なところをうまくブリッジするソリューション」(松本氏)であり、クライアント仮想化市場において「今後1〜2年で大きな流れになってくる」(同)と見込んでいる。

左から「HP t5730 Thin Client」、仮想PCサーバとDDCが動作している「HP ProLiant ML350 G5」「HP BladeSystem bc2200 Blade PC」 左から「HP t5730 Thin Client」、仮想PCサーバとDDCが動作している「HP ProLiant ML350 G5」「HP BladeSystem bc2200 Blade PC」

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