「OracleによるSun Microsystemsの買収は、IT業界全体の垂直統合のトレンドに位置するもの。こうした流れはITのコミュニティの中では避けられないものでもある。ビジネスアプリケーション、ミドルウェア、OSといったコンポーネントのできるだけ多くの部分を自社で抱えることにより、ユーザーがベンダーにロックインされた状況を、自由自在に作りだせる。その中で何か問題が発生すれば、特定のベンダーに責任をなすりつけることは確かにたやすい。しかし、本当に必要なのは、ユーザー側に選択肢を与えることではないだろうか。こうした状況は、Software AGにとっては大きなチャンス。なぜなら、現在において水平統合のビジネスを展開できる数少ない会社のひとつだからだ。(水平統合のモデルの中では)複数のベンダーのパワーを集約した、いわば“スーパーベンダー”が、いかにバランスを取るかを見極めることが重要になる」
かつてSun MicrosystemsでJavaのチーフエバンジェリストを務め、現在はSoftware AGでwebMethods事業部担当バイスプレジデント、最高戦略責任者の職にあるMiko Matsumura氏は、同社が4月23日に開催したプレスミーティングの席上でこのように述べ、エンタープライズITの分野におけるベンダー寡占化の流れの中で、独立系ベンダーがユーザーの選択肢を提供する必要性を訴えた。
Software AGが中核事業とするSOA(サービス指向アーキテクチャ)について、Matsumura氏はGartnerのハイプ曲線を示し、現在SOAという概念が、黎明期から流行期、反動期を経て「回復期から安定期」へと移行する途上の「啓蒙の時期」にあると指摘。システム統合や事業変革の手段として、必須のものとなっているとした。
また、Matsumura氏は、無秩序なシステムの拡張や統合を繰り返すことによって、エンタープライズITシステムの複雑性が増し、価値が低下する状況を、都市計画の分野などで使われる「スプロール現象」という用語を使って説明。その複雑さを解消し、ビジネスプロセスとITの対応を明確にするにあたって、SOAの手法が最も効果的である点を指摘した。
こうしたメリットがある一方で、企業にとって「SOAの導入は難しい」と認識されている現実をMatsumura氏は認める。この「難しさ」が生まれるの理由の一つは、IT組織における「部族主義(Tribalism)」にあるとした。ここで言う部族主義とは、アプリケーションの機能のほか、プラットフォームの違い、地理的な問題、企業の吸収合併、ビジネスユニットごとの独自性など、さまざまなレベルでの「隔絶」を指す。これらの阻害要因を廃し、SOAプロジェクトを軌道に乗せるにあたっては、明確な導入方法論が必要だとする。
Software AGでは、これまでのSOA導入ノウハウの蓄積から、SOAプロジェクトを「ロケット打ち上げプロジェクト」に模して体系化した「SOAロケット・サイエンス」というアプローチを提案している。このアプローチに基づいて、実用的な手法を解説した「誰でもわかるSOA導入(SOA Adoption for DUMMIES)」という日本語版書籍を同社の主催、協賛するイベントで配布するほか、この書籍の内容に基づいて、約10日間160万円でSOA導入の計画、検証、提案までを行うSOA導入支援サービスを提供し、安定期にさしかかりつつあるSOAの啓蒙に努めるという。