先頃開催されたOracle OpenWorld Tokyoでは、成功事例の紹介も特に関心が高かったようだ。
日立電子サービスは今回、「攻めの保守サービスへの転換 - 利用者4,000人のシステム構築によるサービスモデル変革」と題し、サービス要員の稼働率を上げてコスト競争力回復を図り、製品故障などをきっかけとする受け身の修理型から、顧客のシステムライフサイクル全体を対象とした総合提案型へと、サービスモデルの変革を目指した同社の取り組みを解説した。
日立電サの変革:保守サービスから統合サービスへ
同社は1962年の設立で、現在(2009年4月)の従業員数は5363人。国内に320カ所、海外には10カ所の事業拠点をもっている。事業内容は情報および通信システムの総合サポートサービスだ。
保守サービス事業は、メインフレームや大型システムのオープン化により、サポートする対象が廉価な小型機器に移行したため、サービス単価が低落傾向にある。加えて、サポートメニューも保守そのものから、企画、設計、構築、運用などに広がっており、「保守」サポート事業が大きな変化を遂げたのが現状だ。
そこで同社では、自社のシステム効率化、IT化とともに、今後顧客からの要望としていっそう拡大してくる統合的サービスのできる企業へ変革しようと取り組みを始めた。
入念な準備が改革を支えてJP1を導入
日立電子サービス サービスインフラ開発部 第3グループ チーフエンジニアの石原弘行氏は、「自社システムが複雑化して規模も大きくなり、保守運用コストが増大した。日本企業ではこれらのコストがIT費用の7割を占めるといわれる。2002年当時の当社も同様で、これを5対5の比率にすることを目指した」と話す。
同社はまず、全社的にIT化を推進する体制を整え、「ITビジョン、IT戦略、ITマスタプランを策定」(石原氏)し、「いち早くITILを取り入れてシステム運用業務の改善」(同)を図った。
すべての運用システムを見直しベストプラクティスを適用、統合システム運用管理ツール「JP1」などを導入して自動化を進めた。
その結果、障害発生件数は半減、運用コストも大きく低減した。
「いまではITIL Foundationの資格取得者は社員の8割に達している」(同)という。
開発規模削減のため「Oracle E-Business Suite」採用
日立電子サービスは事業を統合的サービスに発展させるための基盤として、FSM(Field Service Management)システムを構築することになる。
このとき、同社はSI事業者との共同作業という道を選択し、大規模開発に実績のある日立製作所の産業・流通システム事業部に開発業務を委託した。
、同社では開発規模を縮減させるためパッケージ利用に踏み切り、「Oracle E-Business Suite」(EBS)を採用。サービス種別ごとの標準化を実施し、「個別最適で実行していたプロセスを標準化」(同社 情報システム技術本部 事業システム部 チーフエンジニア 吉田浩美氏)することで、新規サービスに迅速に対応できるようになった。
年間200万件以上に上るサポート案件--課題だったDB統合
同社が年間で抱えるサポート案件は200万件以上に上っているとともに、ここまでの事業展開で蓄積された多種、多様なデータは膨大なものとなる。そのため、データベースの統合も大きな課題だった。