さらにユニークなのは、5年に一度の「サバティカル休暇」です。これは研究者などに与えられる長期休暇のアイディアを元に企業でも採用されるようになった休暇制度で、日本企業ではまだ馴染みが薄いのですが、IT系の外資系企業では多く取り入れられるようになってきました。「リフレッシュ休暇」と呼ばれることもあるこの休暇は、一般的には2週間程度が多いのですが、アドビでは3週間と長めに設定されています。「本社では3週間だったので、短くする理由はないと思いました」と杉本部長は説明します。
「クリエイティブな会社でありたい、クリエイティブな社員であってほしい」というのがアドビの企業としての願いであり、サバティカル休暇はその感性を養うためにも、通常の業務以外にも目を向ける機会を得るためのものとして長期に設定されています。3週間を使って習い事にチャレンジをしたり、海外旅行に出掛けたり、最長では有給と組み合わせて8週間の休みをとり、海外の学校に参加した人もいるそうです。
仕事の調整については、「皆、部署の仲間やマネージャーと調整し、きちんと取っています。そこは自己管理の世界。休んでいる最中にメールをチェックする人もいますが、それは(会社の)カルチャーなのでいいと思っています」と杉本部長。
飛び石なしのゴールデンウィーク休暇あり、本社の制度に合わせた長期サバティカル休暇ありと、本当にいいところ取りですが、そこには「オンとオフを切り替えて、休む時は休もう」という、メリハリのある会社の体質を大事にしたいという思いがあると杉本部長は話しています。
外資系企業ではトップレベルの保険制度
杉本部長は、もうひとつの大きな特徴として「医療保険などに対するケアが非常に手厚いこと」を挙げています。「米国では、健康保険は企業が契約して社員に手当を提供するもので、『会社が面倒を見る』という意識があります。そこでアドビでは、社会保険の健康、雇用、介護の部分は、給料以外の手当として会社が支払う制度を取り入れました」と、ここにもアメリカの「良いところ」を取り入れています。日本の健康保険制度のような公的保険がない米国では、どのような健康保険を提供してくれるかが会社選びのポイントにもなります。そのような目線で規定を作るとは、国内の一般企業からすると目からウロコではないでしょうか。
アドビの制度では、以下のように保険が手厚くカバーされています。
- 健康保険、雇用保険、介護保険といった社会保険の自己負担分を会社が支払う
- 新卒から役職付き社員まで、ランクに関係なく一律3000万円の団体生命保険に加入、費用は会社が負担する
- 疾病、けがなどで職務が不可能になった場合の長期所得補償保険に加入。働けるようになるまで、または本人が60歳になるまで基本給の60%が支払われる