風邪をひいて内科にかかったり、歯の治療をしたり、医療費の自己負担金は馬鹿になりませんが、アドビでは、加入している社会保険の自己負担分を給料時に加算してもらえるのです。所得分の税金は引かれますが、実質通常の保険医療に対する個人負担はなくなります。団体加入している生命保険については、通常は「年収の何倍」といったレベル別に分けられる企業が一般的ですが、同社では新卒者でも本部長でも一律の金額で掛けているところが特徴的です。社員を大切にするということは、役職など関係なく全社員同等であるというわけです。
実績の良さが福利厚生の良さにつながる
様々な休暇制度で社員のリフレッシュを促すだけでなく、医療保険や長期所得保障などで社員の家族をも含むケアを充実させているのが同社の特徴です。「福利厚生などの面において、日本にある外資系企業ではトップレベルだと思っています。もちろん、それだけの実績を出す社員だからこそ、こうした手当を提供しているのです」と杉本部長。
実は杉本部長自身、12年前に一度アドビを離れ、別企業の人事職で働いた後、2年前にアドビに再入社したのだと言います。「戻って来た当時、私が関わった制度がそのまま残っていたので、正直びっくりしました。これは幸せなことで、それだけ社員ががんばった結果、キャッシュフローが続いているのだと思いました」。杉本部長が戻ってから、再度団体生命保険の金額も増やしたのことで、本社も含めアドビでは「福利厚生の質は良くするけれど落とさない」という姿勢を取っているそうです。
杉本部長以外にも、一度退社した後、再びアドビに戻ってくる社員は少なくないそうです。「もちろん、求められるスキルと合っているかなどの前提はありますが、体制としては歓迎しています。出てみたらやっぱり良かったと思って戻って来るのですから、それだけ会社に対するロイヤリティも高いということですし、良いことだと思っています」(杉本部長)
有言実行の創設者
今回杉本部長から、日本オフィス設立当時のこんなエピソードもお聞きしました。それは、「PostScript」や「Photoshop」、「Illustrator」などのデスクトップパブリッシング分野を手掛けていた頃のこと。「創設者のCharles GeschkeとJohn Warnockが来日していた時に、よくJohnが『マイベイビープロジェクト(私のとても大切なプロジェクト)をデファクトスタンダードにする』と意気込んでいたんです。その時は何のことかわからなかったのですが、後にそれがAcrobatのことだとわかり、『これこそ有言実行だ!』と思いました。衝撃的でした。現在ではFlash技術を生かして開発された『AIR (Adobe Integrated Runtime)』へと発展していて、常にテクノロジの先を見ているなと感じます。こうした企業文化がベースとしてあるからこそ、技術やビジネスの成功に結び付いているのだと思います」。
そして、20年間アドビの企業文化を中と外から見てきた杉本部長は、人事のプロフェッショナルな目線で「どれだけアドビという会社に対して、また、製品に対しての情熱があるかどうかが重要だと思っています。採用に関しても、『アドビでこういうことをしたい』、『アドビだから入りたい』という人の考えを尊重しています。社員はアドビが好き、だからこそ生産性が高と思っています」と語っていました。
それでは、今回はこの辺で! あなたの会社のユニークな制度についての情報も、ぜひお寄せくださいね。
「あったらいいな」を実現する企業:ファイル5 | |
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社名 | アドビ システムズ |
事業内容 | デザイン、イメージングおよびパブリッシング用ソフトウェアの開発ならびに販売支援 |
設立 | 1989年4月 |
従業員数 | 190名 |
資本金 | 1億8000万円 |
米国本社 | Adobe Systems(1982年設立) |