ジョブ管理を10年ぶりに刷新、自動化機能を強化
そしてもうひとつ、Ver.9の機能面での特徴はオートメーションを司るジョブ管理の刷新といえる。ジョブ管理機能はJP1の特に大きな差別化要因となっているが、これをVer.9では全面的に作り直した。
「ジョブ管理のAJS2を今回、10年ぶりにAJS3に刷新しました。前回このようにアーキテクチャを変えたのはVer.6のときで、今回のVer.9ではやはりSmartを掲げ、分かりやすさを実現しました。ひとつは起動性能の大幅な改善です」
GUIレベルでの改善に留まらず、運用業務の切り口から分かりやすさを追求したという。従来から機能強化は進めていたが、今回は定評のあったビジュアルなジョブネット画面に定義情報もひとつの画面で表示できるようにした。
さらに、利用目的に応じた機能選択も大きな特徴だ。仮想環境になれば、どこで誰が、そしてどの業務がどのサーバを使っているかが分かりづらくなる。そこで、従来は操作対象をリスト表示するだけだった画面に、Ver.9では管理者や運用担当者など使う人の目的に応じて機能選択した画面を表示するようにした。
つまりは、利用目的に応じて操作の流れを直感的に把握できる、まさに大規模、複雑化するシステムに対応する機能といえる。
そして、ジョブ管理機能の刷新で実現した2番目の特徴はリアルタイム監視だ。業務全体の進捗度をリアルタイムかつ定量的に把握でき、ジョブの終了予測日時も予測できる。
このリアルタイム監視はすでにVer.8で実現していた機能だが、今回のVer.9ではさらに日次や一覧でしか見ることができなかった情報をサマリー画面で見えるようにした。これを見ることで、ジョブネットの終了予定日時も予測できるようになった。
「裏側でこれまでの実績に基づくナレッジベースのシミュレーションが動いているわけですが、運用者としては『これが終わらないと帰れないよね』という心配が必要なくなるのは大きなメリットだと思います」
さらに、設定画面はカスタマイズできる。従来は39項目を入力しなければならなかったものが、デフォルト設定など4項目の設定ですむようになり、人為的設定ミスも防げるようになった。このように新しい機能が加えられたVer.9だが、これを馴染みのあるVer.8の画面モードでも利用できるというのも、優しい機能である。
日本のソフト産業を担う?
JP1が誕生して15年を迎えることは冒頭に紹介した通りだが、この11年間は運用管理ソフトの分野でシェアNo.1の座を維持している。その間にJP1は、膨大なユーザ数を獲得してきた。鎌田氏の「ひとつの文化になっている」という言葉も、納得できる。
かつて、メインフレームというハードウェアの陰にかくれてソフトウェアが「タダ」だった1969年に、世界で初めてソフトウェア専門事業所を立ち上げたのが日立。当時のその事業所の名称は「ソフトウェア工場」だった。
その工場で高価なメインフレームの「おまけ」として開発されていたソフトウェア。しかし、パソコンソフトが脚光を浴びた結果、日立は1991年にソフトウェア工場という名称をソフトウェア開発本部に変えた。さらに、日立のソフトウェア事業をその3年後に発表したJP1の大ヒットが勢いづかせた。
このように日本のソフトウェア産業の進展とともに歩んできた長い歴史を持つJP1。日立も今回のVer.9には大きな期待をかけているようだ。