EU、マイクロソフトには悪夢となりそうなウェブブラウザの「投票画面」を検討中?

文:Mary Jo Foley(Special to ZDNet.com) 翻訳校正:末岡洋子

2009-06-09 17:35

 欧州連合(EU)の対Microsoft独占禁止法訴訟で、いくつかの情報がリークしている。この情報が真実であれば、Microsoftの立場は苦しくなりそうだ。

 Wall Street Journalは数週間前、Opera Softwareが開始した今回の独禁法訴訟の是正措置の一案として、欧州委員会(EC)はMicrosoftに対し、他社製ウェブブラウザのWindowsへのバンドルを要求することを検討していると報じた。Operaが当初、ウェブブラウザベンダー間が「同じレベルで競争できる」よう、配信に関してなんらかの処置を求めていたことを考慮すると、この措置案は驚きではない。

 しかし、米国時間6月8日、今度はBloombergが、ECは複数のPCメーカーに調査用紙を配布したと報じた。この調査でECは、Microsoftがウェブブラウザの「投票画面」のようなものをWindowsに設定することをどう思うかの意見を求めているという。この「投票画面」がどのようなものになるのかに関する詳細情報は少ないが、インストール時に「Internet Explorer」「Firefox」「Opera」「Chrome」から選択できるようにする画面と予想できる。このリストには、「Safari」も含まれるかもしれない(Microsoftは、このうわさを含め、ECとの独禁法訴訟についてはなにもコメントしていない)。

 Mozillaの「Firefox 3.5」の内部テストビルドのデモを見てきたところだが--今週リリース候補(RC)版がリリースされ、その後正式版が公開になるといわれている--、デフォルトで提供されるウェブブラウザをそのまま利用するのではなく、特徴や機能に基づいてユーザーが自由にウェブブラウザを選択できるようになると、Microsoftは深刻な危機に陥る可能性がある。最新のFirefoxには、タブの分離、JavaScriptの高速化、オーディオ/ビデオタグの統合など、IEにはない数々の新機能が導入される予定だ(もちろん、IE 8には、細かなプライベートブラウジング設定など、Mozillaより先行している機能もある。だが、MozillaがFirefox 3.5で提供する最新機能は見栄えが良く、様子見の姿勢を保ってきたユーザーが一気に飛びつきそうなものだ)。

 ECが単に、PCメーカーにウェブブラウザのチェックボックスリストの提供だけを要求する場合、Microsoftは自社の知名度をもって、ユーザーが知名度の低いライバル企業に流れないように阻止できるだろう。だが、ハイテク通ではない一般消費者の多くは、IE以外のウェブブラウザが存在することを知らない。「iPhone」や検索エンジンからAppleやGoogleのウェブブラウザを使ってみようと思うかもしれない。さらには、「投票画面」プロセスに、「予告編」のような個々のブラウザを紹介する動画(ベンダー各社が作成した2分程度の動画)が入れば、Microsoftにとって戦いはさらに厳しくなりそうだ。

 以前にも述べたが、ECがOperaの苦情を聞いて調査を進めると決定したことに、私はいく分驚いている。というのも、Microsoftはずいぶん前から、IEはWindowsの一部だと主張してきたからだ(「いく分」と書いた理由は、ECはMicrosoftに対する訴訟理由を無理やり見つけようとしているようにも見えるからだ)。だが、今回の訴訟は進んでおり、Microsoftが先を見越して「Windows 7」でIEを削除できる機能を提供したとしても、ECが手を緩めるようには見えない。

 「ECが正しい/ECは間違っている」といういつもの議論を展開する代わりに、私は「投票画面」のような措置をどのように思うか、読者の皆さんの意見を聞いてみたいと思っている。

 これまで私には、ECとMicrosoftのウェブブラウザバンドルに関する訴訟は、消費者寄りというより、ライバル寄りのように見えた。だが、Microsoftがライバルのウェブブラウザをバンドルすることを強制されないのであれば、その代わりに消費者が設定時にウェブブラウザを選択できるようにするのであれば、ライバルだけではなく、消費者のためになるのではないか。読者の皆さんは、インストール時に設定できるのであれば、消費者はMicrosoft以外のウェブブラウザを選択すると思いますか? このような措置により、最善のウェブブラウザが勝利する市場が形成されると思いますか?

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ

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