Ed Whitacre氏は米国時間6月9日、破産手続きを経て生まれる「New GM」を監督する新取締役会の会長に任命された。
Whitacre氏は新会長としてGMを救えるのだろうか?
誤解しないでほしい。Whitacre氏は電気通信業界で起用されたとき、素晴らしい仕事をやってのけた。四半世紀前にAT&Tが解体された際、同氏は「Baby Bell」と呼ばれる旧AT&T系の地域電話会社の中で最小規模だったSouthwestern Bell Corporationの社長になった。そして、最終的にはその会社をAT&Tにした。
Southwestern Bellは規模が大きなほかの地域電話会社よりも収益性が高かった。そして、Whitacre氏の意欲的な指導の下、同社はPacific Telesis、Ameritech、Southern New England Telephone、BellSouthを次々と吸収して大きくなった。さらにComcastの無線事業や、他の通信企業も多数買収した。最終的には、「Ma Bell」(母Bell)と呼ばれる残りのAT&Tを買収した。AT&Tは長距離通信や法人サービスを手がけていたが、効果的な競争ができていなかったのだ。そしてこの時、Southwestern Bell(しばらく前にSBCに改称していた)はAT&Tの社名を引き継いだ。
だが今回、その再現を目にすることは難しそうだ。Whitacre氏がGMをスプリングボードとして利用し、ほかの自動車メーカーを買収して、恐れられる国際的競争企業のイメージにGMを再創造するのは難しいということだ。
Whitacre氏はSouthwestern Bellのトップになった時、十分に保護された分野(地域電話会社)を足場とする収益性の高い企業を手にした。同氏は、(ケーブルテレビやインターネットからの)競争が高まり景気が悪化した際に、競合各社を買収していった。
ところが、GMには足場となる収益がない。買収できる競合企業もない。OpelやHummerといった資産の吐き出しはさらに続くだろう。
ここで求められているのは、まったく新しいやり方で自動車事業を見直し、まったく新しいやり方で事業を行うことだ。それならあるいは、かつてSAPのトップに立つと目され現在は電気自動車のイノベーターとなったShai Agassi氏の方が、より的確な選択肢だったのではないかとも思える。Agassi氏でなくとも、自動車製造、考え方、哲学に関して次世代の人材の中から選ばれるべきだった。
こうした次世代の人物像に、Whitacre氏は当てはまらない。同氏は確かに優秀だが、基本的にはM&Aの男なのだ。
Whitacre氏の監督の下で、Southwestern Bell、SBC、あるいはAT&Tから誕生した製品や経営プロセスのイノベーションを、1つでも挙げることができるだろうか?
私は挙げられないと思う。
もちろん、Whitacre氏は、インターネットに料金所を設置し、コンテンツへの高速アクセスにプレミアム料金を課す計画を進めているとみられていた。しかし、SBCがAT&Tを買収すると、同氏は態度を変化させた。
今回、Whitacre氏はGMで同様に姿勢を改めることが必要だ。合併による成長という選択肢はない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。原文へ