コミュニティなしにTOMOYOは語れない
もうひとつ、TOMOYO Linuxのメインライン化は、国内外のコミュニティなしには語れない。
最後にTOMOYO Linuxを支援してくれたコミュニティに対してのメッセージを、メンバーに聞いた。
文字通りゼロからのスタートだったTOMOYOが、「2007年以前には、夢にも思わなかったメインライン化を実現できたのは、取り組みを支えてくれた方々の支援があったから」だと原田氏はいう。
「どこにいて、何をやっていても常にその感謝の気持ちとともにあったから、どんなに困難な状況でも、あきらめずに乗り越えることができました。私は、プロジェクトを支援してくれた一人ひとりに、このメインライン化を喜んでほしいと思っています。メインライン化はプロジェクトの成果ではなく、助けてくれた一人ひとりの成果です」(原田氏)
「このプロジェクトに全てのエネルギーを注いでいる」と言い切る半田氏は、「一生懸命努力すること。決して諦めないこと。それがハッピーエンドを迎えるための鍵である」という。
そして、それは「いろんな人たちに助けられ、メインライン化を達成した今になって振り返ってみると、オープンソースコミュニティという世界にも共通しているメッセージだと思いました」と語った。
武田氏は、「しんどいながらも充実したこれらの日々が実を結んだかと思うと感慨深い」とした上で、「まずは、メインライン化という節目を無事迎えられたことを今は素直に喜んでいる」という。
また、今年10月に東京で開催されるカーネル・サミットにTOMOYO Linuxが招待されたことを受けて、こうも語っている。
「『メインライン化は手段であって目的ではないよ、これからが大事』――多くの方からこの言葉をいただいています。実際その通りで、TOMOYOはLinuxカーネル2.6.30のリリースでようやくスタートラインに立ったといえます。カーネル・サミットに招待されたのも、これからが本番、というコミュニティからのメッセージだと思っています」(武田氏)
2008年の夏から新たなメンバーとしてプロジェクトに加わった沼口大輔氏は、メインライン後のTOMOYOの担い手として、目下、積極的にコミュニティに参加して発表を行うなど、精力的な活動を展開中だ。
「2008年の夏からプロジェクトには関わってきました。これまで、危機を乗り越えてメインライン化へ取り組み続けることができたのも、多くの人に支えられたからだと、強く感じています。私たちのチャレンジはまだまだ続きます。我々だけでなく、支えてくださる方々にもTOMOYOを応援してよかったと思っていただけるようにがんばっていきたいと思います」(沼口氏)
「このプロジェクトは、オープンソースのプロジェクトであると同時にNTTデータという会社のプロジェクトでもあります。自分が勤める会社ですが、長い間、形として見える成果がない取り組みを認めてくれたことに敬意を感じ、感謝しています。いつか、会社にも『TOMOYO Linuxに取り組んで本当に良かった』と思ってもらえるような状態にすること、それが私のゴールです」と、原田氏はプロジェクトの今後の展望について触れた。
「それは、メインライン化よりも難しいかもしれませんが、その夢に向かって、また歩き始めます」(原田氏)
ルーキーから日本代表へ
7月3日、TOMOYO Linuxはメインライン化を記念し、YLUGカーネル読書会、セキュアOSユーザ会、まっちゃ445合同勉強会の協賛で勉強会を開催する。
勉強会に引き続き懇親会も予定されており、TOMOYOのメインライン化を祝おうと、すでに100名もの申し込みがあるという。
2年前、メインラインが何かも知らないルーキーだったころの面影は、TOMOYOにはもうない。今やTOMOYOは、名実ともに日本を代表するLinuxカーネル開発プロジェクトになった。