「我慢」を別の視点から見てみよう--田代センセーのメンタルテクニック(22)

田代真人(マイ・カウンセラー) 2009年07月09日 08時00分

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 みなさんこんにちは! マイ・カウンセラーの田代です。物事を冷静に考えれば、不安や悩みの解決方法も見えてきます。そんな不安や悩みを自己解決するメンタルテクニック。前回、2回にわたってダイエットのお話をしました。その中で、ダイエットは「我慢くらべ」だと表現しましたが、今回はその「我慢」についてお話ししましょう。

 私たちは、小さな時から親や学校の先生にいろいろな場面で「我慢しなさい」と言われ、育ってきました。しかし、そもそも「我慢」とは何でしょうか。辞書には「感情や欲望のままに行動するのを抑え、堪え忍ぶこと。辛抱すること」(大辞林)と書かれています。これが一般的な意味ですが、ほかにも仏教的意味合いとして「実際には存在しない我が自分の中心にあると考え、それを根拠として行動する思い上がった心。おごり高ぶり」とも書かれています。

 「慢心」という言葉があります。「慢」とは、仏教的には「おごり高ぶる煩悩」のこと。つまり「我慢」とは、もともとの意味を考えると、心から芽生えたおごりや高ぶりを我思うままに行動に移すことを抑えましょう、ということなのでしょう。そのおごりや高ぶりが、現在では欲望と置き換えられて、意味をなす言葉になっているようです。

3次元の図 欲望の3次元グラフ

 さて、「欲望」といえば、このコラムでは「欲望の3次元グラフ」についてよく話をします。「損か得か」、「良いか悪いか」、「好きか嫌いか」によって、人は行動するという話です。我慢とは、この欲を抑えることになります。しかし、単に得する行動を抑え、良い行動を抑え、好きなことを抑える……というものでもありません。我慢とは、自分が「〜したい」と思い行動することを心の力で抑制することです。心をコントロールするんですね。それは非常にメンタルな力とも言えます。ですから、それらの力を発揮するからには、その理由が必要です。

 ここで我々が日常生活で我慢する場面をいくつか思い浮かべてみましょう。欲しいものを我慢して購入しない。食べたいものを食べない。飲みたいものを飲まない。言いたいけれど言わない。眠いけれども寝ない。観たいテレビを観ない……など、ひとつひとつを挙げてみるとたいしたことではありません。たいしたことがなくても、そのひとつひとつを我慢しなければ、少しずつ失われていくものがあります。小さなものでも積み重なると大きくなる。それが嫌だから我慢して、自分の行動を抑制するわけです。

 では、我慢しなかった場合に失うものとはなんでしょうか。お金や健康、時間ですね。場合によっては、信頼、プライド、品性、友達、家族なども失うケースがあるかもしれません。すべて自分に必要なものじゃないか、と気付くことでしょう。つまり我々は、自分に必要なものを失わないために我慢して生活しているわけです。もちろんそれは、失わないと同時に得るものでもあります。

 必要なものを得る生活と必要なものを失わない生活。生活を人生と置き換えてもいいでしょう。必要なものを得る人生と必要なものを失わない人生、そのような人生を手に入れるために我慢する。我慢とはそういうものだと結論づけてもいいのではないでしょうか。

 ただ、前述のように我慢することは心の力で自分の行動を抑制することですから、そう簡単ではありません。心を強くしなければ、我慢できる人間にはなれないのです。

 心を強くする。これこそが人間の生きる力、原動力とも言えます。この力を得るために、人はいろいろなことをやってきました。そのひとつが修行です。山を歩き、滝に打たれ、絶食をする。こうした苦行を繰り返し、寺に入り、煩悩を消す。非常に宗教的ではありますが理解はできます。しかし我々にはマネできません。では我々はどうすればいいのでしょうか?

 答えは簡単ではありません。しかし、考え方を変え、先ほど述べたような「我慢」自体が修行だと考えればいいのです。我慢は、いうなれば「プチ修行」です。小さな我慢を繰り返し経験することで、修行を積む。修行を積めば心が強くなるのは、本物の修行と同じです。そうすることによって、より大きな我慢ができるようになる。大きな我慢ができるということは、またひとつ大きな修行を積んだことになります。だからもっと大きな我慢ができる心に成長するのです。

 我慢は修行。修行は自分の心を強くする。心が強くなった自分は、我慢する前の自分より、少し成長しています。いくつになっても成長できる自分には自信も芽生えてきます。その自信がまた心を強くするのです。我慢は、時にストレスと感じることもあります。しかし、心を強くするためのプチ修行だと考えれば、我慢も前向きにとらえられて少し楽しくなってくるのではないでしょうか。

田代真人
筆者紹介

田代真人
マイ・カウンセラー 代表取締役。九州大学工学部機械工学科卒業後、朝日新聞社を経て学習研究社へ。ファッション女性誌「ル・クール」編集者の後、主婦向け実用雑誌 「おはよう奥さん」の創刊メンバーとして、主婦の悩みを解決する「悩み相談センター」を開設する。その後ダイヤモンド社へ移籍し、「ダイヤモンド・ブレイク!」「ビットビジネス」など数々の雑誌を編集長として創刊した後、ビジネス開発本部副部長に就任。2006年、これまでの編集経験から「人々の悩みを解決したい」との思いに至り、マイ・カウンセラーを設立。2007年ダイヤモンド社を退社し、メディアプロデュース業のメディア・ナレッジを創業すると共に、マイ・カウンセラーの代表取締役に就任する。
ご意見、ご感想は mc-info@mycounselor.jp まで。

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