今、情報システム部門が抱える課題のひとつに、データセンターの電力消費問題がある。サーバの増加に伴い稼働に必要な電力も増加し、環境問題への意識の高まりとともに、その対策が重要課題としてクローズアップされてきた。
キリングループ内でシステムインテグレーションとユーザーサポートを一手に請け負っているキリンビジネスシステムは、この問題にどう対応したのか。ガートナー ジャパンが先頃開催した「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2009」から、その取り組みを見てみよう。
持ち株会社制移行でサーバ資産が集中
キリンというと、まず頭に浮かぶのはキリンビールやメルシャンなどの酒類事業。しかしキリングループは、キリンビバレッジを中心とする飲料・食品事業や協和発酵キリンの医薬事業などを抱え、その事業内容は多岐にわたる。
こうした各事業会社によって構成されるキリングループでは、2007年7月に経営体制の刷新を目的に、キリンホールディングスを頂点とする持ち株会社制に移行。これに伴い、各事業会社に共通する機能を司る機能分担会社として、具体的にはシステムインテグレーションやユーザーサポートを行う情報システム子会社としてのキリンビジネスシステムの位置付けを明確化した。
同社情報技術統轄部の関口克夫氏がこう言う。
「キリングループの中で、私たちのような機能分担会社はグループ全体に共通する機能を集約し、グループ全体の経営効率の向上を図っています。グループ全体のIT機能を統合して担当しており、これら機能分担会社によってグループの経営効率を高めながら、お客様へのサービス向上を目指しています」
そのキリンビジネスシステムが持ち株会社制移行で直面したのは、各事業会社からのサーバ資産の集中だった。グループ各社のIT機能を統合したため、データセンターはたちまち電力が不足するという事態に直面した。この問題をいかに解決したかが今回のテーマだ。
同社は現在、4つのデータセンターを擁する。東京・三鷹に第一データセンター、横浜市に第二データセンター、そして災害対策用のデータセンターを栃木県芳賀郡に、またウェブマーケティングやeビジネスに特化したデータセンターを東京江東区に持っている。このうち、最初に設置された第一データセンターは1988年4月から利用されている。
しかしその後、サーバは増加の一途を辿り、この第一データセンターは2004年に改修を余儀なくされている。「10年先までのキャパシティを見越しての強化」を目的としたものだった。だがそれもいずれ限界を迎えることは明らかだ。関口氏の言葉だ。
「その改修を通じても、電算機室にはわずかな余地しかなく、2008年には電力容量を使い切ることが見込まれました。そこで第二データセンターの開設を決定したのですが、第一データセンターの電力容量不足は依然として大きな課題として残りました」
電力消費を増大させた2つの要因
改修をしたものの、第一データセンターの電力消費量は予想を超えて増加傾向にあった。持ち株会社制移行でグループのIT資産がキリンビジネスシステムに集中したことが大きな要因になったことはすでに紹介したが、これに加えて大規模なシステム再構築プロジェクトも同時並行して進行していた。
「そこで室温設定を変更や消灯などの省エネ対策を施したのですが、焼け石に水という状態でした」という状況に陥った。
第一データセンターの電力消費量の推移を見ると、2007年は対前年比102%の増加に留まっていたが、翌2008年は対前年比113%という結果になっている。この年だけで、販売系データウェアハウスの増強、内部統制対応の経理新システムのサーバ増強、メールサーバの増強などいくつかのプロジェクトが進行していた。