2番目は、システム開発後のテスト用サーバの用意。新規のシステム開発で用意したサーバはそのまま本番で使用しているケースが多く、開発終了後にも検証ができるサーバを用意する必要があったためだ。
「開発用サーバをそのまま本番で使っているケースがほとんどでしたが、後になってテストや検証するサーバがないという問題が散見されました。そこで仮想化ソフトを使って検証用サーバを確保することにしました」
そして最後の目的は、サーバ準備の早期化である。システム開発のプロジェクトにおいて、短期間で新規のサーバを用意する要請が多くなったが、この期待に応えるというものである。
アプリケーションとデータストアに階層化してサーバを共同利用
同社が導入した仮想化ソフトは「VMware ESX Server」と「Microsoft Virtual Server」、そして「Windows 2008 Server Hyper-V」である。
ESX Serverは、ゲストOSとしてx86/x64プロセッサで動作するほとんどのOSをサポートしていることが最大の特徴であり、これが採用の決め手になった。また、物理マシンから仮想マシンへの移行ツールが用意されているのも大きな特徴。そのため、同社は主にパッケージソフトで使用するとともに、保守契約が終了したマシンの適用業務の延命でも使用している。
一方のVirtual ServerとHyper-Vは、ゲストOSにWindows系と「SUSE Linux Enterprise Server」をサポートしているというのが特徴だ。大規模システム向けの「Windows Server 2008 Enterprise」の場合、管理OSに加え4つまでのゲストOSを使用することができるため、同社は「Internet Information Server」(IIS)やホスト端末のエミュレータで主に使用している。
これによって同社は、2005年から2008年までの累計で、154の仮想マシンを23の筐体に統合することができた。平均すると6〜7基の仮想マシンをひとつの筐体に統合していることになる。
それでは、仮想化ソフトによって統合したサーバを実際にどのように共同利用しているのだろうか。
同社はサーバ共同利用にあたって、サーバをアプリケーション(プログラム)層とデータストア(データベース)層の2つに分離して配置、これにより拡張性、耐障害性、低コストを実現しているという。
具体的に、アプリケーション層ではサーバを複数配備し、各々のサーバに同じプログラムを配置することで、サーバをスケールアウト、つまりサーバの数を増やすことで拡張。一方のデータストア層ではサーバを本番用と待機用を配備し、すべてのデータを一つのデータベースに配置する形にし、サーバをスケールアップ、つまりサーバの高性能化で拡張している。
仮想化ソフトによるサーバ統合については他のメリットもある。x86系の適用業務の場合、OSの種類やバージョンを問わないことから、移行ツールで実際のマシンから仮想化ソフト上の仮想マシンへ移行できる。
「仮想化ソフトを使うことで適用業務に手を加えることなく、OSごとにひとつのマシンに統合できます。また作成した仮想マシンは必要なときに使用することが可能で、これによって新規の適用業務をここで稼働させることも可能になりました」
コスト的にも、仮想化ソフトの導入効果は明らかになっている。仮想化ソフトを導入した2005年単年の集計ではあるが、サーバ導入費用については約1350万円を削減、そしてその保守費用は140万円程度が削減されたという。
電力消費を抑えるという取り組みが、さまざまな分野で効果を上げている。
社名 | キリンホールディングス株式会社 | ||
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設立 | 1907年2月23日 | 所在地 | 東京都中央区新川2-10-1 |
資本金 | 1020億4579万3357円 | 連結従業員数 | 3万6554人 |
連結子会社数 | 371社 | 連結売上高 | 2兆3035億6900万円 |