データ総量23TB--BIでリアルタイムなマーケティングシステムに刷新:資生堂 - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2009-07-17 19:00

 SIerとDB、BIツールの選定を経て、2007年1月に今回のマーケティングシステム再構築のプロジェクトが発足する。同社はその後、本番稼働までの1年半の間に、20回以上のシステム開発分科会、さらに11回のステアリングコミッティを開催している。

 そして、2008年4月には業務系機能を中心に新マーケティングシステムを1次リリース、そして6月に新マーケティングシステムの2次リリースを完了、すべてのシステム導入が終わった。この時点で旧システムはすべて停止、同時に販売管理系システムも完全に統合した。

 今回のシステムが成功したことについて、木村氏はこう見ている。

 「経営層にまでプロジェクトの意義を理解していただけたことが大きなポイントになりました。コスト効果を明確に訴えたり、将来起こり得る変革を予想し、未来の削減効果までをアピールしたことが奏功したと思っています。また、プロジェクトのスタート時からユーザ部門に参画してもらい、現場のヒアリングを実施しながら推進したこともよかったですね」

商流変更にも柔軟、迅速に対応

 具体的にどのようなシステムができあがったのか。

 化粧品事業を担う資生堂(販売会社は資生堂販売)と、トイレタリー事業を担うFT資生堂では商流が異なる。商品が工場から本社に送られ、そこから消費者に商品が届くまで、資生堂販売では販売店、消費者という流れになるが、FT資生堂では卸店、販売店、そして消費者というように卸店がワンクッション入る。

 旧システムではIBMのシステムにDBがあり、かなりの数のアプリケーションサーバにもDBが分散していた。制度変更には全システムのデータや画面変更が余儀なくされた。しかし新マーケティングシステムではOracle RACを核に基本DBを構築、売上速報、分析機能(定型、非定型)、定型帳票、計画入力(入力画面)・実績報告という主要な業務はすべて基本DBを経由して行えるように機能を集約。全体で従来は435機能あったものを143機能(67%減)に統廃合、制度改定時の対応を縮小化することに成功した。

 木村氏は新システムの全体像を以下のように説明する。

 「当社はリアルタイムでデータを見たいという要求が非常に高く、即時に更新していくデータがあります。これを担うのがDBの速報層です。それに対し、分析層では大量のデータをかき回す層です。このように、システム負荷の高い即時更新(速報)層と大量データを検索する分析層を分割し、可用性を重視した設計になっています」

 旧システムでは約200のシステムが稼働しており、1万本以上のプログラムが稼働していた。これが新しいシステムでは、サブシステムが6、プログラムは約1500本になっている。新システムの規模は、データ総量が約23テラバイトとなり、総利用者数は約5000ユーザー、速報層への最大同時アクセス数は約400を実現している。リアルタイムでデータを更新しながら(ほぼ30分更新)、この運用規模を実現している。

 「現在の利用状況ですが、新システムのアクセスはすべてで旧システムを上回っています。特に導入後の最初の決算月である2008年9月には10万アクセスを記録しました」

 当初の目的であった組織・制度変更への対応でも大きな成果があった。旧システムでは要件定義に3カ月、データのコンバート作業で48時間要していたものが、新システムに移行した2008年10月の組織再編対応では作業がまったく必要なかったという。さらに翌月の一部商流変更の対応では旧システムに比べて95%の工数削減が実現できた。これによって、情報企画部の要員がより戦略的な業務にシフトできるようになったという成果もあった。

 現在、新マーケティングシステムは単なるマーケティング領域だけでなく、経営戦略から商品開発、販売施策、営業、物流、そして生産に至る資生堂のすべての業務領域の基盤DBになっているという。

社名株式会社資生堂
設立1872年所在地東京都中央区銀座7-5-5
資本金645億円連結従業員数2万8810人
連結子会社数86社連結売上高6903億円

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