Throughput Accountingでは驚きの結果が!
次はThroughput Accountingで検討してみよう。
まずは、製品ごとにスループットを計算する。売値から材料費を引くだけなので、製品Aが1700円、製品Bが2800円である。
ここからが大事なポイント。次に製品のスループットをもとに「制約工程における製品のスループット」を算出する。これは、製品のスループットを支配する制約部分のスループットを見るためだ。制約工程の処理時間から、1分間当たりのスループットを求め、この値に注目するのである。原価計算方式と大きく異なるところだ。
制約工程のスループットは、製品Aが113円/分、製品Bは80円/分。そこでスループットの大きい「製品Aを優先して生産する」と判断する。なんと原価計算方式とは逆の製品が選択されたのである。これはショックだ。
製品Aの制約工程の処理時間は15分。需要は500個あるので、15分に500をかけると7500分が製品Aの生産時間となる。残りの2500分を製品Bの生産に充てる。製品Bの制約は35分なので、残り時間を35分で割ると71個と算出された。
スループットの合計は「製品スループット×個数」なので、合計して104万8800円。利益は、スループットから業務費用の40万円を引くので、64万8800円となる。
ちなみに、先の計算において、制約工程のスループットに注目しないと、以下のような結果になる。製品Bの製品スループットが大きいので、製品Bを選択。製品のミックスは製品Bが200個、製品Aが200個となり、スループットの合計は90万円。ここから業務費用の40万円を引いた月間利益は50万円。原価計算方式と同じ答えが得られる。最後にまとめて業務費用を引くので、計算はシンプルだ。
製品ごとのスループットを見るだけなら、原価計算方式と同じ結果が導き出されるのであるが、製品ごとのスループットを基に制約部分のスループットを見ると、優先順位が変わり、異なった結論が導出されることがある、という点はたいへん興味深い。なお、この例は、異なる結果が出るよう、あらかじめ数字を調整したものであることをお断りしておきたい。
以上、今回は、原価計算方式と、TOCにおけるThroughput Accountingとの違いを簡単な例をもとに検討してみた。TOCにはスループット計算の他にも、対立を解消するツールとして有名な「Cloud」や、事象間の関係性を因果関係ロジックで分析する「Branch」、現状問題構造ツリー、未来問題構造ツリーなど、使ってみると大変有用なツールが複数存在するので、興味のある方はぜひ勉強してみてほしい。
次回からは、戦略の立案から実行、評価に至るサイクルを回しつつ、意思決定をしていく上で必要となるITツールについて見ていくことにしよう。