マイケル・ジャクソンの作品から読み解く彼の本当の姿--エリック松永の英語道場(29) - (page 2)

エリック松永

2009-07-27 08:00

 そして、1991年にリリースされたMichaelのヒットソング「Black Or White」をあらためて聞いて、私は涙が止まらなくなりました。「なぜ人はここまでMichaelを責め続けるのだろう。曲を通してこんな素晴らしいメッセージを贈り続けてくれたのに、なぜ人はMichaelが黒人を裏切ったかのように責めるのだろう」という思いがこみ上げてきたのです。

 Black Or WhiteでMichaelは次のように歌っています。

Boy is that girl with you
Yes we're one and the same
Now I believe in miracles
And a miracle has happened tonight
But if you're thinkin' about my baby
It don't matter if you're Black or White

この子が君の赤ちゃんなのかい?
そうさ、僕らは一心同体なんだ
僕は奇跡を信じている
そして(命が誕生するという)奇跡が起こった
でも、僕の赤ちゃんが黒人か白人かなんてどうでもいいことじゃないか

 Black or Whiteのプロモーションビデオの中盤では、世界中の人が楽しそうに歌を歌い、John Landisが手がけた当時最新技術のモーフィングで、登場人物の顔が人種の壁を越えて自然と入れ替わっていきます。そこには人種の間に何の壁も存在しません。そして皆が最高の笑顔なのです。

 ラップシーンでは白人のMacaulay Culkin君が登場し、次のようなラップが流れます。

Protection for gangs, clubs, and nations
Causing grief in human relations
It's a turf war on a global scale
I'd rather hear both sides of the tale
See, it's not about races just places, faces
Where your blood comes from
Is where your space is
I've seen the bright get duller
I'm not going to spend my life being a color

ギャング、クラブ、国家の保護の名の下に
人間関係に悲劇が生まれている
地球規模の縄張り争いだ
両者の言い分を聞いてみようよ
やっぱりそうなんだ、原因は人種じゃない
生まれた場所や顔、血統が居場所を決めるんだ
僕は光が曇ってしまうのも見てきたよ
有色人種と呼ばれる人生はごめんだ

 Black or Whiteのプロモーションビデオは、最後のダンスシーンがあまりに過激だとして一般放映が中止されました。最後のシーンでMichaelは、叫びながら車を破壊しハンドルを扉に投げつけます。その時割れた扉に書いてあった言葉は、「KKK rules」(白人至上主義者のKKKが世の中を支配する、といった意味)でした。

 このシーンを見ても、あなたはまだMichaelが黒人を裏切ったと思いますか? 人種問題を考えるにあたり、Michaelの問題はきちんと振り返らなければいけないと思います。1人のヒーローを見過ごさないために。

Peace out,
Eric

Eric
筆者紹介

エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。著書に「クラウドコンピューティングの幻想」(技術評論社)がある。

イラストレーター: まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。

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