月次決算を5営業日に--グループ全体でシェアード会計システムを利用:小田急 - (page 2)

宍戸周夫(テラメディア)

2009-07-24 21:00

 「ベンダーの担当者は基本的に良いことしか言いませんし、何よりも担当者に情が移ってしまい、正しい評価がしづらくなるという懸念がありました。そこで、業務要件や技術要件の適合性についてはあえて直接業者に確認することをせず、公開情報に基づき評価を行いました。そして最終評価では約60の評価項目を設定し、当社のライバル会社であるJRや私鉄各社での導入実績などが決め手になり、Oracleに決定しました」(工藤氏)

 しかし、導入決定から運用開始までのスケジュールはタイトだった。導入を決定し、グランドデザインを描き始めたのは2002年1月。実際のシステム構築がスタートしたのは同年3月だ。運用開始は、そこから実質1年後という2003年4月に設定された。しかも、同プロジェクトは単なるERP導入に留まらない。業務改革が伴うため、システム構築の段階では定着化活動も重要なテーマとしてプロジェクトに取り込まれた。

 加えて、さまざまな課題が浮上してくる。まず、資材システムの統合とグループ会社への展開だ。資材システムはちょうど1年前の2001年にオープン系システムに移行していたが、これをOracle EBS導入に合わせて統合することを決めた。つまり、Oracle EBSのモジュールを活用して資材システムを統合、業務改革を実現するという課題だ。

 また、業務改革のノウハウをグループ会社に移植、決算早期化を実現するという課題も浮上した。しかし、グループ会社といっても大企業から中堅、中小企業まで規模はさまざま、さらに業種もさまざまということで、そう簡単には展開できないという事情もあった。

 このグループ各社への展開にあたっては、小田急電鉄100%出資でシェアード会計を担う「小田急フィナンシャルセンター」という経理子会社を2002年3月に設立している。小田急グループ各社の経理業務を集約化し、コスト削減、経理業務の質的向上を図るという目的がある。またグループレベルの効率的な資金運用を支援するため、同年10月には資金を一元管理する「キャッシュマネジメントシステム」の運用を開始している。

急速に進んだグループ会社への展開

 小田急グループは、この小田急フィナンシャルセンターを中心にグループ各社への展開を手掛ける。その展開方針を工藤氏がこう説明している。

 「当初グループ会社は簡易パッケージを導入していましたが、小田急電鉄本体のOracle EBS導入を機に、段階的に簡易パッケージからOracle EBSへシステム変更する形で展開することにしました。グループ会社は鉄道、ホテル、流通業などさまざまですが、Oracle EBSはこうした多種多様な業種業態にも対応可能でした。また、グループ会社への展開は決算の早期化、業務標準化など小田急グループ全体の価値を向上するという観点から、当社が主体的にインフラ構築を推進し、各社の導入コスト低減に務めた結果、展開は急速に進捗しました」

 展開の前提として、展開作業は各社個別に実施する、マスター類については現行あるものを流用し、追加分のみ作成する、特別な事情がない限りアドオンは開発しないなどの前提条件をつけた。また展開作業については各社の業務量など適合性を分析し、その後の業務設計、マスター作成、システム設定・移行、総合テスト・操作教育を経て本稼働までを平均6カ月で終えた。

 またこのプロジェクトの全体の管理は、小田急電鉄のIT推進部(当時は経営企画部)が担当。展開対象会社や協力会社はそれぞれで社内業務整理、システム設定などの役割を分担、特に小田急フィナンシャルセンターは適合性分析支援や業務設計支援、グループ全体で共同利用するデータセンター「小田急ICTセンター」はセキュリティ設計やインフラ構築という形でプロジェクトを進めていった。

展開で見えてきた各社の事情

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