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ある経営者の回想(前編)--経営に必要なのは何よりもバランス - (page 3)

森川徹治(ディーバ)

2009-07-29 08:00

B/Sを意識するきっかけ

 経営的には現金収支とP/Lの乖離を将来からの借金と理解し、できるだけ大きくしないことに気を付けつつも、売り上げと費用中心の経営をしばらく進めていた頃、ある銀行の支店長さんから「そろそろバランスシートを気にしなさい」とアドバイスを頂いた。

 正直なところ、その時点では、“会社は経済社会の一部であり、経済社会全体の血流を円滑に流すためにも、会社の持続性がある程度確保できさえすれば、キャッシュは明日のためにどんどん使うべし”という考えを持っていた。キャッシュフロー経営ではなく、単なるフロー経営である。“借金もできるだけしないが、貯金もあまりしない。会社の社会における価値は売り上げであり、利益は最低限でよい。その方が社会還元もできている”という考え方である。今書いていて改めて思うが、なんとも脳天気な発想である。

 転機は突然やってくる。事業環境の変化だ(実際の変化は突然起こるものではなく、さまざまな要因が積み重なり徐々に起こるものだが、主観的には人間が認識した時が変化の時である。大抵の場合突然起こったかのように感じる)。従来通りのやり方を繰り返して事業成長することができなくなると途端に具合が悪くなる。会社も生き物、元気な時もあれば、体調を崩す時もある。しかし、初めて体調を崩した時は、ベンチマークとなる経験も耐性も持たず、狼狽する。環境への適応のみが回復への唯一の方法とわかっていても、泰然自若とはいかない。

 死に至る病ではないとしても、体調を崩すことで、現実が少し見えることもある。順調な時には見えなかった、さまざまなステークホルダーの姿が急に浮かび上がってくるのである。事業の安定性の観点では、この時初めて収益性の意義を強く理解した。少なくとも、ある程度の事業環境変化を吸収できるだけの収益性はきちんと確保しておかねばならない。収益性とは、環境変化への対応力でもある。また、投資家への責任とは何かも強く意識する機会ともなった(今回のテーマは財務情報の重要性の認識であるので、諸説割愛する)。

構造転換とは事業資産配置の最適化

 事業環境変化への対応とは、変化を認識し、事業資産を再配置することである。こう気付くまでには相当の時間を要した。P/L中心の考え方を脱却できない間は、とにかく売り上げの確保にばかり注意が集中する。しかし、環境に適した事業構造に転換できない以上、自転車操業を繰り返し、さまざまなバランスを崩すことになる。

 その結果、どうしても事業資産を意識しなければならない状況を創り出す。つまり、事象資産の再配分を行わなければならない状況である。構造転換とは、「Restructuring」のことである。

 構造転換を要する環境変化は、単なる商品開発や営業努力ではカバーできない。いよいよという時に、事業環境に合った事業資産はどんなものかを考え、再配置を行うことになる。

B/S経営は会計技術の経営への応用

 会計の話における事業資産は、B/Sに計上されているものであるが、ここでの事業資産とは経営上の話である。よって、すべてがB/Sに計上されているわけではない。むしろ、資産評価が困難な事業資産の方が多いかもしれない。

 しかし、会計上のB/Sの考え方は大変役に立つ。会計基準上の是非にかかわらず、事業資産として認識すべきものは何かを考え、合理的計測までは困難としても、資産であるか、資本であるか、それとも負債であるかを理解し、負債はあくまで借りているもの、資本や純資産はしっかりと発展させるもの、そして資産配分をどのようにしていくのか、資産そのものが適正であるかを考える助けとなる。

(後編は8月5日掲載予定です)

筆者紹介

森川徹治(MORIKAWA Tetsuji)

株式会社ディーバ代表取締役社長。1966年生まれ。1990年中央大学商学部卒。同年プライスウォーターハウスコンサルタント(現IBMビジネスコンサルティングサービス)入社、経営情報システムなど企業情報の活用に関わる多数のプロジェクトに関わる。1997年、株式会社ディーバを創業。以来、連結会計システムをはじめ企業の持続的な成長を支援するグローバル経営会計情報システムの創造と普及に取り組んでいる。

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